研究課題
本研究の目的は,鼻咽腔閉鎖機能について機器による測定方法の確立ならびに簡易な評価法を作成し,健康寿命の延伸に寄与することであった.超高齢社会の渦中にある日本では,高齢者の誤嚥性肺炎罹患者が多く,これらは脳卒中後や神経筋疾患,老化などの種々の現任によって,口腔,咽頭諸器官の機能低下が起こり,食物あるいは唾液を誤嚥することが原因となる.また,一連の嚥下動作には鼻咽腔閉鎖機能が密接に関わっている.平成28年度から平成30年度までは,鼻咽腔閉鎖機能について機器による測定姿勢と測定値の関連性について,若年健常者,中・高年健常者,摂食嚥下障害,構音障害者を対象に測定姿勢(座位,仰臥位,リクライニング位)による測定値の検討を重ねてきた.令和元年度は,平成30年度に実施した脳卒中後に片麻痺を生じた被験者の鼻咽腔閉鎖状態の左右差における検討のデータ集積を継続した.片麻痺患者では,麻痺側への側臥位姿勢を長時間維持することが難しく,全身状態の安定を最優先させながら測定を実施した.協力の得られた被験者データからは,健側への側臥位,麻痺側への側臥位,正中姿勢における鼻音化率測定値が明らかに異なっていた.このことは,麻痺による筋活動量の減少ならびに重力による影響が示唆され,今までは測定時姿勢(向き)の詳細な条件は設定されていなかった.また,本研究からは測定角度も測定値に影響を及ぼす要因となることが明らかとなった.今後,これらの知見をもとに,機器開発につながる試案を作成していく.
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