研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域一般住民集団における性・年齢階級別の血中ペントシジン値(以下血中PENT値)など基本特性を明らかにするとともに、血中PENT値と動脈硬化の危険因子・頸動脈エコー計測値(内中膜複合体厚など)等との関連を検討し、動脈硬化マーカーとしての意義を明らかにすることである。 国立循環器病研究センター予防健診部が主体となり1989年から実施している地域一般集団コホート研究(吹田研究)の参加者の中で、2013年度に追跡のための健診を受診し、同意取得後に血液検体が凍結保存されている約1000人について、平成28年度に血中PENT値の測定を行った。本年度(平成29年度)は、血中PENT値の測定データを予防健診部に集積している吹田研究の既存データと連結してデータセットを作成し、解析を実施した。 血中PENT値(単位:pmol/ml)について、明らかな性差は認めなかったが(男117 女110)、年齢とともに著しく上昇する傾向が認められた(50歳代94, 60歳代108, 70歳代116, 80歳代137)。血中PENT値を3分位で3群に分けて比較すると、血中PENT値が上昇するにつれて、高血圧、脂質異常症、糖尿病で治療中の割合は高くなり、総頚動脈での最大内膜中膜複合体厚も増加した。また、糖尿病の有無で血中PENT値を比較すると、糖尿病者(治療薬内服中または空腹血糖値126mg/dl以上またはHbA1c6.5%以上または随時血糖値200mg/dl以上)では統計学的に有意に高く(糖尿病無し:108, 糖尿病有り:144)、性別と年齢を調整しても、ほぼ同様の傾向であった。
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