研究課題/領域番号 |
16K09092
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
大門 眞 弘前大学, 医学研究科, 教授 (20241698)
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研究分担者 |
大泉 俊英 山形大学, 大学院医学系研究科, 講師 (00344797) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | GWAS / 遺伝疫学 / 疫学研究 / 糖尿病 / 遺伝子メチル化 / 関連解析 / コホート研究 / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
生活習慣病は種々の生活習慣、及び、遺伝因子が関与する多因子疾患であり、生活習慣(環境)と遺伝因子の相互作用がもっとも重要である。また、この相互作用の情報無しでは、疾患感受性遺伝因子の解析結果は一般論でしか語れず、実臨床に利用するのは難しいが、これまでの疾患感受性遺伝因子の検索では、これら因子の相互作用は考慮されていない事が多い。そこで、生活習慣の詳細なデータを踏まえて疾患感受性遺伝因子を検索し、実臨床に役に立つ手法の開発も目的に本研究を行っている。 平成28年度の研究の実績の概要は以下。 1)コホートの追跡:平成28年6月、山形県舟形町にてコホートの追跡調査を行い、データの拡充を行った。参加者は347名(男/女:156/191、年齢63.4±11.3)。糖尿病有病率は男14.4%、女11.6% で、男女ともに有為に増加していた。 2)ゲノムワイド関連解析(GWAS)解析:前年度より行っているDNA チップ(Human Core Exome-24v1.0)を用いての網羅的な遺伝型解析を、本年度も行い対象者全員での解析を終了した(本年度はHuman Core Exome-24v1.1を用いた)。この結果を用いて、糖尿病等種々疾患を対象とした、GWAS解析を始めておいる。また、解析に際しての取り組みとして、遺伝型よりコホート内の血縁関係が特定できる対象を除外するという試みや、単塩基多型(SNP)のみならず、幾つかの候補遺伝子のメチル化解析も合わせて行ない、幾つかプレリミナリーな結果が出ている(HIF3Aのメチル化は男性においてのみ(性特異的に)肥満と関連していた。既報糖尿病関連リスク遺伝子多型とBMI 、年齢、性別を合わせて用いた糖尿病発症リスク予想法の開発。等)。 現在、さらに発展させた詳細解析中。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定した研究は以下の3つに大別される。 1)コホートの追跡。2)ゲノムワイド関連解析(GWAS)解析。3)生活習慣との相互作用を考量した関連解析。 1)に関しては、予定どおり追跡調査を実施した。 2)に関しては、予定より早く(予定では29年度中に終了)DNAチップによる網羅的遺伝子多型解析が進み、28年度末までに、対象全ての解析を終了できた。 3)に関しては、現在、種々解析中で、まだ公表した成果はないが、プレリミナリーな結果は出ている。身長状況としては良好と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、以下を考えている。 1)生活習慣との相互作用を考量した関連解析:追跡は平成28年度には、15年目となり、追跡時の疾患発症をエンドポイントとしたコホート解析が可能になってくると思われる。死亡、あるいは、糖尿病の様に発症率の高い疾患では、発症を指標とした遺伝子多型関連解析が可能となってくると思われる。その際、生活習慣を考慮して、生活習慣の指標、例えば、摂取エネルギー量、塩分摂取量、エネルギー消費量、等により、統計学的に補正(多重解析にこれら因子を加える)、あるいは、層別化し、生活習慣・遺伝因子の相互作用を踏まえた、疾患感受性遺伝因子を明らかにする。 2)生活習慣及び遺伝因子を用いた、将来の生活習慣病発症リスクの評価法の考案:遺伝因子を用いた糖尿病リスクの評価法をこれまでに報告したが(Sato N, Htun NC, Daimon M, et al. Endocr J. 2014;61:967-988)、得られた知見を踏まえて、生活習慣を加えた統合的に将来の生活習慣病発症リスクの評価を行う方法を開発する。 3) 上記解析から認められた疾患感受性遺伝子と疾患を関連づける機能の解析。a. 認めた遺伝子(遺伝子産物)の機能と疾患病態との関連についての解析:蛋白及びmRNA 発現の質的、及び量的変化の有無を免疫組織化学法、ウエスタン ブロット法及び定量的RT-PCR 法にて調べる。b. 認めた多型が機能性多型である可能性についての解析:多型が転写に及ぼす影響の解析(Chip アッセイ、ゲルシフト、スーパー シフトアッセイ、ルシフェラーゼ アッセイ、等)、mRNA の安定性や蛋白の機能(酵素活性、標的結合能、等)に及ぼす影響等を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
検診で予定していた検査(血液検査、等)を平成28年度は行わなかったので、その検査に充てる予定の予算を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の検診では、上述の平成28年度予定していた検査(今年度の検体に合わせて前年度の保存血液検体も使用する)を行う予定としており、配分の予算は使用する予定である。
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