研究課題
研究期間中に種々の解析を行ったが、結果の纏まったものは以下。Cdk5 regulatory associated protein 1-like 1 (Cdkal1)遺伝子多型と栄養素別摂取量の相互作用が耐糖能に及ぼす影響の検討(2018, アメリカ糖尿病学会発表予定)【目的】Cdk5 regulatory associated protein 1-like 1 (Cdkal1)の一塩基多型(SNP)はアジア人型2型糖尿病発症に関与しているとされる。今回、一般住民を対象における本遺伝子SNPと耐糖能及びインスリン分泌能との関連を各栄養素摂取量別に検討した。【方法】2014―2016年に青森県弘前市岩木地区健康増進プロジェクト検診を受診した1656人(男/女:657/1045人、年齢:54.1±16.3歳)が対象。解析した本遺伝子SNP(C/T)はrs9465871.【結果】1. HbA1cはCC:CT:TT=5.88±0.66:5.84±0.63:5.77±0.53とTT群と比較してCC群で有意に高値であった(P=0.02)。2. 脂質摂取量に基づいて三分位し、脂質摂取量が高値の時、CC群ではCT+TT群と比較しCPR indexが有意に低値であった(CC vs CT+TT, 1.15±0.38 vs 1.27±0.55, P <0.01)。糖尿病(糖尿病治療薬使用中、FBG ≧126 mg/dl又はHbA1c ≧6.5%)の有病率はCC群で有意に高値であった(CC vs CT+TT, 17.4 vs 9.90, P < 0.05)。【結語】Cdkal1の多型と脂質摂取量が、インスリン分泌及び耐糖能に相互的に影響を与える可能性が示唆された。糖尿病のリスクとしての、遺伝子と環境要因との相互作用を示した本研究は、遺伝子環境要因相互作用のさらなる研究に繋がるものと思われた。
2: おおむね順調に進展している
DNAチップによる網羅的遺伝子多型解析は終了しており、GWASでの遺伝子解析は、環境要因を考慮しない形では終了している。現在、臨床データ、追跡データを用いた解析を進めている。いくつかの結果は、論文としての採択には至っていないが、学会での発表を予定している。解析全体としては、まだまだ進める必要があるが、研究計画としては概ね順調に進んでいると思われる。
今後の予定としては、以下を考えている。1)生活習慣との相互作用を考量した関連解析追跡は平成30年度には、17年目となり、疾患発症をエンドポイントとしたコホート解析が可能になっていると思われる。その際、生活習慣を考慮して、生活習慣の指標、例えば、摂取エネルギー量、塩分摂取量、エネルギー消費量、等により、統計学的に補正(多重解析にこれら因子を加える)、あるいは、層別化し、生活習慣・遺伝因子の相互作用を踏まえた、疾患感受性遺伝因子を明らかにする。2)DNAメチル化等の単塩基多型(SNP)以外での関連解析単塩基多型(SNP)のみならず、DNAメチル化の有無等も対象に関連解析を行う。既に、一部遺伝子(例えば、the hypoxia inducible factor 3A (HIF3A) )を対象に進めており、肥満等、生活習慣病との関連を示唆する結果も得ている。
理由:研究打合せ等の旅費、論文投稿費用、等が必要だが今年度にはその調整ができなかった。計画:次年度に繰り越し、上記目的で使用する予定。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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