研究課題/領域番号 |
16K09097
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 佳代 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60444717)
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研究分担者 |
早野 順一郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90173054)
植田 典浩 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (10456709)
清野 健 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40434071)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大気汚染 / 心拍変動 / 循環器疾患 / PM2.5 / 粒子状物質 / 成文分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、微小粒子状物質(PM2.5)とその成分の曝露が循環器疾患発症、ひいては生命予後に及ぼす影響のメカニズムを解明することを目的として、全国の参加医療機関で記録されたHolter心電図情報から得られる心拍変動指標とPM2.5及びその成分濃度との関連について検討する。 今年度は、全国の常時監視測定局で観測されているPM2.5重量濃度の整備を行った。PM2.5成分濃度の連日測定をしている地域は非常に限られているため、2000年代初めから連日サンプリングを行っている名古屋市におけるPM2.5成分(イオン成分、炭素成分)の整備を行い、今年度は2009年度以降のサンプルを用いて成分分析を行った。 また、全国のHolter心電図データベースのデジタルデータから、心拍変動解析を行い、心拍変動指標の抽出を行った。Holter心電図記録は、20歳以上の成人の記録で、かつ20時間以上の記録のあるもののみ対象とし、装着中の心拍変動指標(RR間隔の平均値(mean NN)、標準偏差(SDNN, SDANN)、周波数分析から得られる指標であるVLF, LF, HFなど)、不整脈の情報について抽出した。さらに、これらのデータのうち、比較的大きなサンプルサイズである札幌市、東京都、名古屋市(約22万件)における心拍変動指標とPM2.5重量濃度とのデータを結合し、探索的な予備解析を行った。 心電図の指標をみると、洞調律以外に、心房粗動、慢性心房細動、発作性心房細動、ペースメーカー調律など、リズムの異常がみられるものが10%程度みられ、対象者属性が健常人だけでなく様々な心疾患をもつ患者集団が含まれているためと思われた。今後の解析では洞調律のみ対象とすることとした。心拍変動指標に大きなばらつきがみられた。また、高齢になるほどSDANNが低下、逆にmeanNNは増加した。また、気象条件と心拍変動指標値の散布図を作成した。高温や低温では心拍変動の値が変動するため、今後の解析では重要な交絡因子になると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で、3地点(札幌、東京、名古屋)における心電図情報の整備、および環境因子の整備を終えており、データのクリーニングもほぼ終了したデータセットを作成している。また、これまでの文献的検討および予備解析から得られた情報より、考慮すべき交絡因子についても検討がされており、今後、大気汚染と心拍変動指標との関連についての解析を行う準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きPM2.5の成分分析を行うとともに、PM2.5重量濃度と各心拍変動指標との関連について線形回帰分析を適用して、関連を検討し、曝露―反応関係について明らかにしていく。必要に応じて、閾値を考慮したモデル、非線形モデルをあてはめる。大気汚染の影響にはラグ(遅れ)がみられる可能性もあるため、ラグを考慮した統計モデルを用い、かつ交絡因子(年齢、気象条件、他の共存汚染物質など)についても考慮する。 meanNN, SDNN, SDANN以外の心拍変動指標や不整脈の指標との関連についても検討する。 さらに、成分分析の結果がある程度蓄積した段階で、PM2.5成分濃度と心拍変動指標との関係についての解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
データベース構築作業における属性や疾患名などの入力に予定より遅れが出ているため、記録媒体の使用量が少なくなり、結果として未使用分が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
データベース構築作業のための物品購入および人件費として繰り越して用いる。
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