研究実績の概要 |
平成29年度は、前年度に引き続き名古屋市におけるPM2.5成分濃度の成分分析および、東京、名古屋、札幌を含む都市における心電図情報の整備を行った。 また、東京と名古屋において、2010年4月~2013年3月までのホルター心電図から得られた心拍変動に関する指標(RR間隔の平均値(meanRR), 標準偏差(SDNN, SDANN), 周波数解析から得られるHF, LF, VLF, ULFなど)とPM2.5重量濃度との関連について、線形回帰分析を用いて検討した。平成28年度の予備的解析結果に基づいて、統計モデルでは、気温と相対湿度を交絡因子として調整した。 解析対象となるホルター心電図の情報について、年齢は20歳以上90歳未満、記録時間が18時間以上を抽出するとともに、心房細動や不整脈の多いものは除き、基礎調律が洞調律のもの(60674件)を解析対象した。PM2.5濃度は、対象期間中に継続してPM2.5観測がされている測定局を1地点ずつ選び、それを曝露指標とした。対象期間中のPM2.5濃度は、東京では14.7μg/m3、名古屋では16.6μg/m3であった。都市別に解析したところ、東京においてPM2.5濃度の上昇は、SDNN, SDANN, ULFの低下と関連がみられ、その関連は72時間後までみられたが、名古屋では関連はみられなかった。 性別、年齢区分別に層別化した解析を行ったところ、女性と高齢者(60-69歳)でその関連は強くみられた。 上記結果より、PM2.5は心拍変動を低下させる可能性が示唆された。PM2.5曝露は、自律神経を介して循環器疾患の発症や増悪に関与する可能性が示唆された。
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