研究課題/領域番号 |
16K09098
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高尾 総司 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (50335626)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ソーシャル・キャピタル / 健康 / 職場 |
研究実績の概要 |
ソーシャル・キャピタル(以下、SC)と健康に関する研究は、地域・職域においてそれぞれ進められ、いずれにおいても集団レベルの豊かなソーシャル・キャピタルが住民や社員の健康に正に寄与することが分かってきた。本研究では、必ずしも健康向上を主目的としない地域と職域の交流事業を観察することで、健康への好影響を期待しうる醸成方法につき基礎的知見を得ることを目的とする。 まず、地域・職域の連携を評価可能とする指標について平成28年6月に開催されたSC研究会における専門家との討議等を経て決定した。地域と職域の交流活動について、地域側は住民を広く対象とし、職域側は影響の及ぶ範囲を想定して、同時に両対象の調査を実施する予定であるが、本年度はまず地域側について岡山県真庭郡新庄村における全戸調査(n=300、住民数850)を実施した。職域側については、交流事業の受け入れに若干の遅れが生じているため、本格的な企業への案内については次年度に行うこととした。ただし、地域と職域の交流事業のブラッシュアップのための試行のための協力企業の募集は行い、7月末と10月に試行を行った。さらに別の目的の機会であっても、企業の人事担当者等を対象にした研修会等に際して、本研究の紹介を行うようにした。 また、地域と職域をソーシャル・キャピタルでつなぐ一つの視点として、「健康経営」も想定することができることから、ソーシャル・キャピタルと健康経営の関係に関しても整理した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
観察対象とする交流事業そのものについては、研究開始当初は順調にモニター募集を含め、試行をほぼ計画どおり実施することができた。また試行においてリストアップされた問題点に対する対処法もおおむね検討済みであり、交流事業そのもののフレームワークはうまく構築できた。研究協力機関でもある旅行代理店から新庄村に対して、当該プログラムを、村の活性化のために活用できるように具体的にも提案済みである。 指標の構築・決定、地域側での調査の準備・計画を含め、研究計画全体の検討については順調に遂行できたと考える。その他、おおむね計画に従って遂行できていると考えるが、特に地域フィールドとなっている新庄村側において協力の主体を村とするのか、プロジェクト協議会とするのかといった点で曖昧な点が残り、また受け入れにおけるキーパーソンである協力者の事情もあり、交流プログラムそのものが停滞してしまったために、調査の実施時期が予定より数ヶ月遅延した。そのため、調査票の回収が年度をまたぐこととなり、現時点で記述を含めた集計はできていない。 地域側の協力については、地理的アクセスの点からも他の候補地もあった方が望ましく、この点を鑑みて、岡山県瀬戸内市における施設についても瀬戸内市の協力を得ながら、同様の受け入れが可能かどうかについて検討をしてきた。
|
今後の研究の推進方策 |
企業側の協力事業場の募集については、多少遅れているが予定どおり、岡山・大阪の両地区を対象として行っていく。また、新庄村の受け入れに関して、不確定要素が生じていることから、瀬戸内市における別施設での受け入れについて協議し、おおむね可能であることが確認できている。なお、瀬戸内市を対象とする場合には、新庄村と異なり全住民を対象とした調査は非現実的であることから、まずは地域側対象をどのように設定するかについての検討も行っておく必要がある。これに関しては、引き続きSC研究会の主要メンバーとの意見交換をもとに検討していくことを予定している。 既に実施中の新庄村における調査について集計を行う。特に、今回あらたに地域・職域連携を評価するために開発した指標が、地域側だけの集計ではあるが、どの程度妥当性を期待できるかについては検討しておく。また格差を縮小するための視点の検討にあっては、まずはベースラインデータから、どのような属性間において格差が大きく認められるのかを中心に記述を行っていく。また最終年度に予定しているフォローアップ調査に反映させるべき事項があるかどうかについて検討しておく。
|