研究実績の概要 |
本年度は、8年間の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の変化に注目し、持続もしくは消失に関与している要因を明らかにするために前向き研究を行った。経過中の脂肪肝発現と消失時には腹部超音波検査での脂肪肝判定にバラツキが混在することから、脂肪肝有り無しの定義を、それぞれ2回連続して有り、もしくは無しとした。対象者は、あまみ島嶼地域の一般住民健診受診者の男女3,069名のうち、8年後まで追跡できた831名(男296名、女535名) である。8年間のNAFLD発生は23例/463例(5.7%)、消失例は62例/256例(24.2%)であった。さらに、肝線維化マーカーである血清中M2BPGiとTypeⅣコラーゲン7sを用いて、脂肪肝の発生・持続・消失時における肝線維化の程度について、女性228名を対象に前向きに観察した。ベースライン時のM2BPGiとTypeⅣコラーゲン7sは、脂肪肝の発生・持続・消失群で対照群に比し高値を示した。5年後の変化では、M2BPGiは持続群と発生群で対照群より有意に上昇し、消失群では持続群より変化量が小さいもの、値は対照群と同様に上昇した。一方、TypeⅣコラーゲン7sでは有意な変化が認められなかった。このことより、肝臓の繊維化は、脂肪肝が無くても年齢とともに進むこと、NAFLDの存在は肝線維化をより進行させること、脂肪肝が消失しても線維化は年齢ともともに進行することが示唆された。 肥満やメタボリック症候群の増加に伴い増加しているNAFLDの分布は、男性で40歳代、女性で60歳代をピークに増加から減少に転じることが報告されているが、本研究の結果から、NAFLDは消失しても、年齢とともに肝線維化進展は持続していることが示唆され、NAFLD発生を防ぐことが、肝繊維化予防のためにも重要であることが示唆された。
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