近年、有機リン系(OP)殺虫剤曝露と注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの神経発達の負の関係が疫学研究で示唆されている。しかし、OP曝露がADHDを引き起こす可能性があるかどうかは、結論が出ていない。さらに、想定されるメカニズムも明らかになっていない。 そこで、本研究ではOPの化学構造に着目し、OPがADHD様行動を引き起こす可能性を検討した。さらに、ADHD患者を対象にした症例対象研究を計画し、ADHD患者の尿中のOP曝露量を測定しOPとADHDの関係について考察することとした。 幼若期の28-35日齢のラットにOP化合物と溶媒対照を腹腔内単回投与した。投与後に高架式十字迷路試験を行い、行動評価を行った。また、対照群から脳を取り出し、試験管内でOP化合物と反応させ、OPが作用すると想定される酵素の活性を測定した。 その結果、OP化合物の投与により、酵素阻害が引き起こされ、それによってADHD様行動が惹起される可能性が示唆された。疫学研究においては、研究対象者のリクルート中である。2群間で性・年齢のマッチングをし、解析を今後行う予定である。
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