研究課題/領域番号 |
16K09106
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
苅田 香苗 杏林大学, 医学部, 教授 (40224711)
|
研究分担者 |
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 講師 (10296543)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 粒子状物質 / 自律神経 / 交感神経活動 / ストレスマーカー / 不安状態 / 気分プロフィール |
研究実績の概要 |
鹿児島県桜島の過去10年間の火山活動及び降灰状況について調査したところ、2011~2015年の年間噴火回数は平均1093回(2015年は1252回)であったのに対し、2016年は年間153回にとどまり、特に7月以降は活動休止状態が続いて噴火は0回であった。 鹿児島県内で常時監視を行っている一般環境大気測定局17箇所における二酸化硫黄や浮遊粒子状物質などの大気汚染物質濃度に関しても、2016年度は日平均濃度・ピーク濃度ともに上昇がみられず年間を通して良好な状況であった。 そこで初年度は桜島周辺で予定していたフィールド調査をとりやめ、先ず対照地区群のデータを得ることを目的に、火山活動影響のない関東近縁に在住・通学する若年男性を対象として、自律神経機能、血圧、唾液ストレスマーカー測定および質問票調査(気分プロフィール(POMS),不安傾向(STAI),ストレス反応 (SRS))を実施し、屋内座位時と屋外歩行時の自律神経活動の変化について調査を行った。 大学1年生16名(平均年齢19歳)にウェアラブル心拍センサーを安静座位および速足歩行時に各30分間装着させ、心拍変動解析を行ったところ、交感神経活動指標Ln(LF/HF)は屋内座位に比べ屋外歩行時に11名(69%)が高値を示したが、他の5名は副交感神経活動がやや亢進した。それら5名のSTAI状態不安の平均得点は有意に低く、またPOMS活気得点が有意に高かった。ストレス指標となる唾液アミラーゼ活性値に歩行前後や群間での差異は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の冒頭で述べた通り、平成28年度は桜島の噴火活動が不活発となり、特に夏季以降は噴火のない状況が続いたため、桜島周辺地域でのフィールド調査を実施せず、先に対照地区での調査を行った。 今後、当初の研究計画と目的に沿って、火山噴火地域で大気粒子状物質等濃度の上昇がみられる一時期をねらって、前年度に予定していた調査を実施する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年4月28日以降に再び桜島の噴火活動がみられるようになったので、今年度内に研究分担者および連携研究者と協働して本調査を実施する。 すなわち桜島周辺地域に在住する若年男性約20名を対象に、桜島の噴火状況を観察して大気の汚染状態が比較的高いと予想される連続した日の同じ時間帯に、屋内・座位安静時および屋外・一定速度歩行時にそれぞれ30分間(計1時間/日)、脈拍変動解析法により自律神経機能の評価を行う。検査時には毎回血圧を測定した上で、対象者の胸部に自律神経機能が判定できるウェアラブル心拍センサーを装着させ、計測したRR間隔より周波数解析を行い、副交感および交感神経機能を評価する。 また、交換神経モニター(KDD;CM2.1)により、自律神経機能検査の前後に被験者の唾液中アミラーゼ活性値を繰り返し2回測定する。さらに自己記入式質問票を用い、心理的ストレス反応の評価をSRS-18(Stress response Scale)により、また、不安状態と不安になりやすい性格傾向をSTAI(The State-Trait Anxiety Inventory)により分析・評価する。 それらの結果を昨年度実施・取得済みの対照群データと比較する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は桜島の噴火活動が不活発となり、特に夏季以降は噴火のない状況が続いたため、桜島周辺地域でのフィールド調査を行うことができず、旅費や謝金等経費を使用しなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年4月末以降から再び桜島の噴火活動がみられるようになったので、当初の研究計画と目的に沿って、火山噴火地域で大気粒子状物質等濃度の上昇がみられる今年度内の一時期をねらって、前年度に予定していた調査を実施する予定である。前年度に使用予定だった旅費、謝金、会議費等は今年度の予算に計上する。
|