研究課題/領域番号 |
16K09106
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
苅田 香苗 杏林大学, 医学部, 教授 (40224711)
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研究分担者 |
吉田 正雄 杏林大学, 医学部, 准教授 (10296543)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 粒子状物質 / 大気汚染物質 / 降灰量 / 自律神経 / ストレスマーカー |
研究実績の概要 |
1)桜島の2011~15年の年間噴火回数は平均1093回であったのに対し、2016年はほとんど噴火がなく、昨年も噴火は計406回でその多くが8~10月に集中した。鹿児島気象台で50g/m2/月以上の降灰が観測されたのは、9、10月のみであったため、第1回現地調査を9/2に、第2回目を11/2に実施した。 調査は降灰地域の鹿屋市に在住・通学する大学生16名を対象とし、自律神経機能、血圧、唾液ストレスマーカー測定(屋内座位時と屋外歩行時)および質問票調査(気分プロフィール,不安傾向,ストレス反応)を、2カ月の間隔をあけ繰り返し2回実施した。鹿屋市内環境測定局での調査時間帯を含む日中8時間の平均SPM濃度は両日ともに0.213mg/m3であり、その他SO2, NO2, Oxを含め、調査日間で大気汚染物質濃度に有意な差異は見られなかった。質問票の各気分、不安、ストレス反応得点には2回の調査で有意差は無く、血圧や唾液アミラーゼ活性についても、歩行前後や調査日による差異は認められなかった。 これらは前年度に実施した対照地域での16名の調査結果と比べても差異が見られず、心拍変動を中心に自律神経指標の詳細な分析・検討を進めている。 2)過去20(1996~2015)年分の既存資料を用いて、鹿児島市内のSPM濃度および降灰量と救急隊出場状況との関係について分析した。市内8箇所の一般大気環境測定値、桜島噴火回数と市内常時観測地点における降灰量、市内全消防本部・消防組の救急出場・搬送統計を収集しリンクさせた。 分析の結果、年平均SPM濃度は、降灰量の全局年平均値とは相関しなかったが、桜島内有村および赤水測定局においては両者に有意な正の相関がみられた。また、過去5(2011~15)年間の月別救急交通事故率は、各月の降灰量と正の相関があったが、救急搬送件数中の急病割合との間に関連はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度も前年度と同様、桜島の噴火活動は不活発な状況が続き、降灰量も少なく、噴火による明らかな大気中SPM濃度の上昇が見られなかった。そのため、現地調査は当初の予定より対象人数を減らし2日間のみ実施した。 平成29年度は新たに鹿児島市内の過去20年間の大気環境データと救急搬送統計に関する資料を収集し、関連性の分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
鹿屋市在住・在勤の大学生を対象に、ウェアラブル心拍センサーを用いて取得した屋内・座位安静時および屋外・一定速度歩行時の連続心拍データについて、脈拍変動解析・周波数解析を行い、副交感および交感神経機能を評価する。フォローアップ調査として、自己記入式質問票を用い、心理的ストレス反応の評価をSRS-18(Stress response Scale)により、また、不安状態と不安になりやすい性格傾向をSTAI(The State-Trait Anxiety Inventory)により分析・評価する。 桜島火山の噴火が平成30年度も活発化しない状況であれば、ほかの国内火山噴火地域における調査の実行可能性について検討する。2017、2018年の霧島市・新燃岳の噴火に際しては、現地研究協力者からの情報と大気環境データ、降灰サンプルの収集を計画し、居住地区別の降灰健康影響調査について検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由) 平成29年度も平成28年度と同様、桜島の噴火活動は不活発な状況が続き、降灰量も少なく、噴火による明らかな大気中SPM濃度の上昇が見られなかった。今後の噴火の兆しを見据えつつ、平成29年度の現地調査は当初の予定より縮小して2日間のみ実施したため、旅費や物品費、謝金等の使用経費が予定額を下回った。
使用計画) 桜島火山の噴火が次年度も活発化しない状況であれば、ほかの国内火山噴火地域における調査の実行可能性を検討し、できる限り他の地域でフィールド調査を実施する。これまでの霧島市・新燃岳の噴火に際しては、現地研究協力者からの情報と大気環境データ、降灰サンプルの収集を計画し、居住地区別の降灰健康影響調査について検討中であり、前年度使用予定であった旅費、謝金、会議費等を今年度の予算に振り替えて計上する。
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