研究実績の概要 |
インジウム(In)曝露による肺障害は、わが国発信の新しい職業性肺疾患である。2013年に特定化学物質第2類物質、またInによる業務上疾患として呼吸器疾患が指定された。しかし、肺以外の毒性評価は知見がなく、腎臓への影響評価は産業医学の喫緊の課題の1つである。本研究の目的は、In取扱い作業者の規模最大の維持フィールドで、腎・肝の慢性影響が生じるのかを検討する。 平成29年度にIn取扱い2工場に勤務する作業者(13名)に健康調査を施行し、影響指標として肝・腎機能検査をした。
腎癌のincident caseはなかった。中間解析結果は、平均年齢は49歳、全員男性、喫煙歴(現在23%、過去15%、非喫煙62%)、平均血清インジウム濃度(In-S)は2.4ng/ml、KL-6 375U/mlであった。対象者をIn-S濃度別4群(低・中・高・超高濃度群:In-S<1, 1≦In-S<3, 3≦In-S<20, 20≦In-S)に分類し、低(n,8)・中(n,3)・高(n,2) ・超高(n,0)濃度群で、低中濃度群が85%であった。KL-6の平均値は303U/ml、293U/ml、790U/mlと高濃度群で高値であったが、統計学的には有意ではなかった。In-Sと肝機能(ALT、AST、γGTP、ALP)および腎/尿細管機能(Cr、BUN、シスタチンC、NAG、β2MG、α1MG、尿中Alb/Cr)の間に有意な相関は認めなかった。昨年度は、In-S濃度別とシスタチンCの有所見率に関連の傾向を認めたが、本年度は、In-S濃度別(低・中・高濃度群の3群)のシスタチンCの有所見は 3/8(38%)、0/3(0%)、1/2(50%)と関連はなかった。さらに対象数を増やし、最終的には糖尿病、高血圧、飲酒などの交絡要因も考慮した解析をする予定である。
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