研究実績の概要 |
インジウム(In)曝露による肺障害は、わが国発信の新しい職業性肺疾患である。2013年に特定化学物質、またInによる業務上疾患として呼吸器疾患が指定されたが、肺以外の毒性評価は知見がない。本研究の目的は、In取扱い作業者の規模最大の維持フィールドで、腎/肝の慢性影響を検討することである。 最終結果(n=62)は、平均年齢43歳、男性52名、平均In作業期間12年、In曝露開始からの期間14年、喫煙歴(現/過去69.4%)、平均血清インジウム濃度(In-S) 5.0ng/ml(範囲;<0.1-45.2ng/ml)、平均KL-6 403U/ml(範囲;143-1940 U/ml)であった。対象者をIn-S濃度別4群(低・中・高・超高濃度群:In-S<1, 1≦In-S<3, 3≦In-S<20, 20≦In-S)に分類し、低/中濃度群が79%と多かった。 腎癌の罹患者はいなかった。肝機能検査の全体の有所見率は、ALT 4.8%、AST 11.3%、γGTP 25.8%、ALP 8.1%、LDH 0%であった。In-SとALPの間にのみ弱い相関を認めたが、In-S濃度別群順の有所見者率は6.3%,5.9%,0%,33.3%と超高濃度群で高値だが有意差はなかった。腎/尿細管機能の有所見率は、Cr 9.7%、シスタチンC 16.1%、NAG 12.9%、β2MG 9.7%、尿中Alb/Cr 1.6%(基準値≦30mg/g・Cr)であった。In-Sとすべての腎/尿細管機能検査の間に相関は認めなかった。シスタチンCのIn-S濃度別群順の有所見率は、9.4%,11.8%,14.3%,66.7%と量反応関係の傾向を認めたが、年齢調整後にIn-Sとの関連は消失した。 本集団では、In-Sと肝・腎機能の間に臨床的な慢性影響は認めなかった。今後は、高/超高濃度曝露者を対象としさらなる評価が必要である。
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