研究実績の概要 |
高濃度の二酸化硫黄(SO2)を含む火山ガスの大量放出を伴った噴火により2000年全島民の島外避難を余儀なくされた三宅島で,火山ガス放出が続く中,避難指示解除となった2006年2月より毎年健康診断を実施した.呼吸器影響評価のひとつの項目として呼気一酸化窒素濃度(FeNO: Fractional nitric oxide concentration in exhaled breath)測定を2008年より継続的に行った.今回,島外の二酸化硫黄の観測値が環境基準を達成している地域に居住する者を対照群としてFeNO濃度を比較し、SO2濃度との関係を検討することを目的とする. 対象者は健診時点で,いずれも中学2年生とした.三宅島では2008年から2014年の間の各年11月にのべ83名に実施し、対照群は31名であった. 三宅島でのSO2濃度は,定点モニタリング(6地点,5分値)をもとに,各健診前3ヶ月間の平均濃度を算出した.FeNOは,Official ATS(American Thoracic Society) clinical practice guidelineより,35ppbを本研究でのcut pointとした. 各健診前3ヶ月間の平均SO2曝露濃度(ppb)は,2008年から2014年それぞれ,17.6, 17.5, 9.6, 7.3, 8.4, 4.2, 5.0であった.2008年から2014年におけるFeNO有所見率(%)はそれぞれ,50.0, 27.3, 18.2, 57.1, 46.2, 38.5, 50.0であった.対照群では,41.9%であり,いずれの年度との比較においても統計学的有意差を認めなかった.今後,対照群については測定数を増やすこと,また,一般大気環境下の他の集団との比較も検討する必要が考えられた.
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