研究課題/領域番号 |
16K09111
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
太田 充彦 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (80346709)
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研究分担者 |
河田 健司 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (30418743)
八谷 寛 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (30324437)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん / 復職支援 / 産業保健 |
研究実績の概要 |
本年度は(1)臨床医と産業医の連携を支援する政策の動向や諸外国における実態の把握、および、(2)復職したがんサバイバーの実態の調査を行った。 (1)平成28年2月、厚生労働省は事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドラインを公表し、事業場に対してがん等の治療が必要な疾病を有する従業員への適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行うよう、事業場内の体制を整備することを促した。同年12月にはがん対策基本法の改正案が成立し、事業主の責務として働く人ががんになっても雇用を継続できるよう配慮することが明記されるとともに、国や地方公共団体にも事業主に対してがん患者の就労に関する啓発・知識の普及へ必要な施策を講じるよう定めた。米国およびオーストラリアでは各がん種別に臨床的視点からのケアプランが作られる動きがあり、がん治療の長期継続化に伴い、がん患者自身ががん自体および治療から生じる心身の不調に気づき、適切なケアを受けることを支援することに役立っている。しかし、復職支援に特化したものではなく、復職を支援するためのスキルが集積されているものではない。 (2)A県公務員(対象母集団10,748名)において、復職を果たしたがんサバイバーの生活上の困難、主観的健康観、心理社会的要因(ストレス認知、ソーシャルサポート、ソーシャルキャピタル、生きがい、幸福感)を調べた。復職したがんサバイバーは112人いた。がん種は乳がん(21%)、大腸がん(19%)、胃がん(14%)の順で多かった。がんサバイバーはそうではない者に比べて生活上の困難を有意に高い割合で有していた。この差は年齢を調整した後も有意であり、生活上の困難ががん自体および治療から生じていることが示唆される。主観的健康観への影響は男性のみ認められた。心理社会的要因は、がんサバイバーとそうでない者の間で有意な差は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は、がんサバイバーの復職を支援するにあたり、いつどのような情報をどのようにがん治療の主治医と復職先の産業医が共有すればよいかを明らかにするとともに、そのための方法を開発することである。本研究目標を達成するためには、臨床医と産業医の間で現在行われている情報共有を理解すること、臨床医と産業医の連携を支援する政策の動向や諸外国における実態を明らかにすること、復職したがんサバイバーの実態を把握すること、がんサバイバーの復職の成否に関連する要因(がんサバイバー個人に起因する要因、職場に起因する要因、その他社会的要因)を明らかにすること、がんサバイバーの復職にあたり臨床医と産業医が共有したい・するべきと考えている情報を明らかにすることが必要である。研究期間中(3年間)にこれらを行うことが必要である。この観点からいえば、現在までの進捗状況は順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドラインおよびがん対策基本法の改正を受けた事業場の対応に関する調査、がんサバイバーの復職の成否に関連する要因に関する文献的調査(メタアナリシスなど)、臨床医と産業医の間での情報共有の今後の在り方を探るための調査(がん専門医、産業医への聞き取り調査など)などを進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文作成・学会発表に際して使用する予定であった人件費・謝金(英文校正費など)およびその他の費用(出版費)の使用がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度以降も論文作成・学会発表の予定があり、それに充当する。
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