麻疹ウイルスの増殖特性の遺伝子型による違いを明らかにする目的で、日本国内で1990年代後半に流行したD3遺伝子型と2000年代になってこれに置換したH1遺伝子型について比較した。Vero/SLAM細胞における感染拡大速度は、両ウイルスで明らかに異なっていた。D3-H1型キメラウイルスの細胞融合と粒子形成は、H蛋白質ではH1型、F蛋白質では逆にD3型により促進されたが、H、F蛋白質が同じ遺伝子型由来の場合には相互に補完し合い、H1型とD3型で差が認められなかった。M蛋白質の機能には差はなかった。以上の結果から、D3型とH1型の増殖性の違いは、他のウイルス蛋白質も関与していることが示唆された。
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