研究課題/領域番号 |
16K09114
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
武井 直子 川崎医科大学, 医学部, 助教 (00509276)
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研究分担者 |
大槻 剛巳 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40160551)
西村 泰光 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (90360271)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 石綿 / 中皮腫 / CTL / granzyme B |
研究実績の概要 |
石綿曝露は悪性中皮腫や肺癌を引き起こす。石綿の発癌作用はよく知られているが、癌疾患の抑制に働く抗腫瘍免疫機能への石綿曝露影響は不明な部分が多い。抗腫瘍免疫において細胞傷害性T細胞(CTL)は特異的に腫瘍細胞を攻撃する。腫瘍細胞が効果的に排除されるためには、CTLが分化することだけでなく、分化後のCTLが機能を持続させることが重要である。我々はこれまでに、混合リンパ球培養法(MLR)を用い、石綿曝露がCD8+T細胞の増殖低下を伴いCTL分化を抑制することを報告した。最近では、刺激後の悪性中皮腫患者CD8+リンパ球の機能低下を報告した。 そこで、本研究課題の目的は石綿曝露下におけるCTL免疫応答の抑制機序を解明することである。H28年度は、CD8+T細胞の増殖や分化誘導を促進するIL-15の添加によって、石綿曝露によるCTL分化抑制が改善するかどうかを調べるとともに、T細胞の増殖を促進するIL-2添加による石綿曝露下CTL免疫応答への影響を比較検討した。 培養2, 4, 7日目の石綿添加/非添加培地中において、IL-15の産生量は検出限界以下であった。IL-15添加はCD25, CD45RA, CD45RO発現量が示す石綿曝露時CTL分化抑制を改善することはなかった。一方で、石綿曝露群で認められるCD8+T細胞数とgranzyme B+細胞比率の増加抑制は、いずれもIL-15添加によって改善した。先行研究ではIL-2添加がgranzyme Bレベルの低下を部分的に改善したのに対し、本研究結果により、IL-15添加は石綿曝露下CTL分化抑制時のCD8+T細胞の数とgranzyme Bレベルの両方を改善することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
得られた研究成果について、平成28年12月5日から平成28年12月7日に沖縄で開催された第45回日本免疫学会学術集会で演題名「Differential effects of IL-2 and IL-15 on the suppressed induction of CTL upon exposure to asbestos」で国内学会発表を行った。 また、平成28年3月12日から16日に米国のボルチモアで開催された第56回 Annual meeting of Society of Toxicologyで演題名「Differential Effects of IL-2 and IL-15 Addition on Numbers and Granzyme B Level in CD8+ Lymphocytes Exposed to Asbestos during MLR」で国際学会発表を行った。以上の理由から、本研究課題の研究目的はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、石綿曝露によるCTL免疫応答の抑制機序解明に取り組みたい。特に、高濃度の長期石綿曝露CD8+T細胞亜株を作成し、CTL機能発現に及ぼす長期石綿曝露影響を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の支払いが次年度に入ってからの支払いになる為。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年3月26日から平成28年3月28日に開催された日本衛生学会学術総会での研究成果発表のための学会出張費として使用する。
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