本研究では、動脈硬化症に予防的にはたらく血中高密度リポタンパク質 (HDL)の産生を促進する食品成分を探索することにより、食品成分による動脈硬化症の予防を目的としている。具体的には、肝臓におけるHDL産生の主要な責任分子であるATP-binding cassette transporter-1 (ABCA1)の発現誘導を指標に、動脈硬化症に予防的に働く可能性のある食品成分を探索した。実験には、ヒト肝癌由来細胞株であるHepG2細胞を用い、ターメリック、赤しそ及び柑橘類由来成分を曝露することにより、ABCA1の遺伝子及びタンパク質レベルでの発現変動を解析した。また、ABCA1の発現を抑制することが明らかになった無機ヒ素を同時に曝露することにより、無機ヒ素によるABCA1の発現低下を抑制する効果があるか否かについても解析を行った。 その結果、今回解析した食品の中で特にターメリックがABCA1の発現を誘導することが明らかとなった。そこで、ターメリックの主成分であるクルクミンについて解析を行ったところ、クルクミンがABCA1の発現をタンパク質レベルで誘導することが明らかとなった。また、無機ヒ素曝露によりABCA1の発現低下とともにコレステロールが細胞内に蓄積される現象を見出しているが、クルクミンが無機ヒ素曝露によるABCA1の発現低下を抑制し、細胞内コレステロールの蓄積を抑制する効果があることが示唆された。クルクミンがどの様なメカニズムにより、ABCA1の発現を誘導するかについては、今後も詳細に解析を行う予定である。
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