研究課題/領域番号 |
16K09126
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小西 祥子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (70451771)
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研究分担者 |
清水 慶子 岡山理科大学, 理学部, 教授 (90135616)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 妊孕力 / 出生力 / 微量栄養素 / 自己免疫 |
研究実績の概要 |
平成27年度に開始した妊娠確率に関する前向きコホート調査の参加者(80名)から採取した血液および尿サンプルを用いて測定を実施した。追跡開始時の対象者の適格条件は、出産経験および不妊治療を受けたことがなく、妊娠を希望して避妊をしていない20-34歳の女性であった。 血清検体中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離トリヨードサイロニン、遊離サイロキシン、抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)の濃度を、電気化学発光免疫測定法(ECLIA)を用いて測定した。 尿検体中のヨウ素、ヒ素、カドミウム、セレン、モリブデンの各元素濃度を誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて測定した。 平成30年度は特に、尿中ヨウ素濃度および血中甲状腺関連バイオマーカー濃度と妊娠確率の関連について統計解析を実施し、環境ホルモン学会研究発表会にて成果を発表した。食事からのヨウ素摂取量を反映する尿中ヨウ素濃度で対象者を3群(低・中・高)にわけると、低い群で遊離サイロキシン濃度が高く、尿中ヨウ素濃度の高い群では遊離サイロキシン濃度が低い傾向がみられた。今回測定した甲状腺関連の他のバイオマーカーについては、尿中ヨウ素濃度との関連はなかった。 日本人の食事には昆布やひじきなどヨウ素を含む食品が多いが、今回の結果は食事を通した高レベルのヨウ素摂取が遊離サイロキシン濃度を低下させる可能性を示唆している。ただし今回は対象者数も少なく、1回のみの採尿および採血によって得られた結果であるため、現代の日本人におけるヨウ素摂取と甲状腺機能の関連を解明するためにはさらなる研究が必要である。尿中ヨウ素濃度と妊娠確率については、予備的な解析において有意な関連はみられなかった。現在、統計解析を継続して実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画には含まれていなかった、血中の甲状腺関連バイオマーカーおよび尿中の微量元素濃度の測定を実施した。米国人を対象とした研究にもとづいた、ヨウ素の摂取量が不足している女性は妊娠確率が低いとする論文が2018年に発表されたのを受けて、ヨウ素の摂取量が多い日本人を対象とした本研究において尿中ヨウ素濃度と妊娠確率の関連を分析することにした。さらに、ヨウ素摂取量と妊娠確率の関連のメカニズムを解明するため、血中の甲状腺関連バイオマーカーについても測定した。その結果、本対象集団における高いヨウ素摂取量が甲状腺機能の低下と関連する可能性が示唆された。妊娠確率との関連はまだ解析中であるが、本研究はヨウ素を多く摂る日本の食文化と、甲状腺機能および妊娠出産との関連について興味深い知見を提供しており、研究の展開が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
妊娠確率に関する前向きコホート調査を用いて2編の論文を投稿する。1編は年齢および性交頻度と妊娠確率の関連についての論文で、もう1編は尿中ヨウ素濃度および甲状腺機能と妊娠確率についての論文である。 新たな研究費が獲得できれば、女性および男性を対象とした前向きコホート調査を実施し、妊娠確率と関連する要因について研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の成果を論文として投稿したが平成30年度中に受理されなかった。平成31年度に再度、修正済みの原稿を投稿するため、英文校閲の費用を計上した。
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