研究課題
人生のある決定的な時期(critical period)の環境要因が、将来の疾患の発症に寄与するのかもしれない。本研究では、妊婦の能動・受動喫煙による胎児期のたばこ煙への暴露や幼少期の受動喫煙が小児期のアトピー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎のリスクに関与するかについて検討した。岐阜市において妊婦と出生児のコホート調査を行った。妊娠中の母の喫煙状況を把握し、妊娠中・出産時の母体血・尿、臍帯血を収集した。妊娠中の母体尿を用いてコチニンの測定を行った。出生時の臍帯血IgE値の測定も行った。喫煙している母の尿中コチニン値は、非喫煙の母に比べ極めて高値だった。胎児期のたばこ煙曝露と出生時の臍帯血IgE値に有意な関連はみられなかった。出生児の追跡調査から、胎児期のたばこ煙曝露と3歳、5歳時の気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎に有意な関連はみられなかった。愛知県の幼稚園児を対象とした調査では、アンケートにて、父親、母親、他の同居者の現在の喫煙状態に加え、喫煙開始年齢、終了年齢、一日当たりの喫煙本数等を聴取した。気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎の有病状況も聴取した。幼児の尿を用いてコチニンの測定を行った。幼児において、両親、同居者の喫煙状況と尿中コチニン値は強い関連を示した。たばこ煙曝露と気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎の有病との有意な関連はみられなかった。愛知県の小学生を対象にした調査では、幼稚園調査と同様に、現在のたばこ煙暴露の情報を得るとともに、母親から妊娠中の喫煙状況(喫煙期間、喫煙本数)についても聴取した。アンケートにてアレルギー疾患の既往や現症を聴取し、早朝尿を採取した。以上より、本研究では、胎児期、幼児期のたばこ煙曝露とアレルギー疾患リスクとの関連はみとめなかった。
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Environ Health Prev Med.
巻: 24(1) ページ: 9
10.1186/s12199-019-0764-1