研究課題/領域番号 |
16K09136
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
大戸 斉 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (20150279)
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研究分担者 |
安村 誠司 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (50220158)
村上 道夫 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (50509932)
前田 正治 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60248408)
藤森 敬也 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (80285030)
中島 聡美 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (20285753)
桃井 真帆 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (90341750)
大類 真嗣 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (50589918)
竹林 唯 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (40832027)
伊藤 亜希子 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (70832020)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | レジリエンス / 避難 / 帰還 |
研究実績の概要 |
2016年度から2018年度にかけて行った本研究補助により活発な研究展開を行って来た。被災住民の精神的健康回復につながる研究成果が挙がり、うつ状態にある住民の回復に更に役立たせるのに有効な事象を解明した。また研究報告会を催し、政策立案者とフロントラインで住民と接している自治体職員と研究成果の共有を図り、政策立案に役立せる機会を設けた。 a.レジリエンス軌跡の解析に容易となる6パターン(安定型、早期の回復、遅れての回復、悲嘆悪化など)を新規に提唱して、解析できるようにした。b.精神的回復促進因子として、「主観的健康度が高い」「震災前よりも運動量の増加」「震災前からの住民との交流の持続」「仕事を通じて人に役立っている」が回復を促す要因であることを明らかにした。
同時に次の項目が避難住民のレジリエンス軌跡に関与することを解明した。 ①福島県民の被災体験者は気分の落ち込み・不安感情が全国平均よりも高い、②避難前に住んでいた地域住民との交流が軌跡に有意に影響する、③スティグマがあっても受容するようになればレジリエンス獲得に作用する、④原発事故被災者と長期避難者には被災体験を共有することがレジリエンスに向かう、⑤大切な人の死別は落ち込みが特に強く、支援が必要、⑥複雑性悲嘆者には悲嘆治療、行動活性化療法など専門的な治療が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2011年震災以来、研究グループは福島県立大学の(1)「県民健康調査事業」をプラットホームにして被ばく線量評価、18歳以下住民の甲状腺検査、避難地域での健康診査、住民とのダイアローグ、妊産婦の精神衛生援助などを通じて、協働して研究を行い、7年間にわたって確実に実績を積み重ねてきた。(2)研究環境としてフィールド調査は福島県内で実施したが、研究協力者を含めて当該研究者と福島県と市町村の担当者との信頼は厚く、調査研究は支障なく進展できた。また、アンケート調査はこれまで多くの実績があり、安定した精度が保持できた。(3)その結果を学術論文として国際的に発信してきた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度からの3年間で、a.事故後の県民健康調査データを補完して「傷ついた心と健康の回復」を意図する。福島県「県民健康調査」事業によって県民の健康指標データが多く集積されているが、集団として捉えるため不安の詳細、不安要因の同定は難しい側面がある。大規模放射線事故は前例に乏しく、自然災害よりも与えるインパクトが大きく、持続する。福島県立医科大学は県民健康調査事業から得られる知見、政府・県市町村データと合わせて総合的に解析できる優位性を有している。 b.複合的災害からの心の回復(レジリエンス)軌跡要因の研究に焦点が当てられつつある。住民の心の傷は「避難」に原因するのもあるが、福島県民は「放射線への不安」に対してある。健康調査」事業によって県民の健康指標データが多く集積されているが、レジリエンスに焦点を当てて、軌跡を多層的多面的に解析して、効果的な重要ポイントを同定する。その結果は行政に反映され、住民の回復に活用可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果報告書の関係機関への郵送が翌年度になったため。また執筆中の論文が年度内に完了せず、英文校正や掲載料など必要経費が次年度にずれ込んだため。
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