研究課題/領域番号 |
16K09142
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
小正 裕佳子 獨協医科大学, 医学部, 特任講師 (60733269)
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研究分担者 |
木村 真三 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (50321849)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 内戦 / 食事 |
研究実績の概要 |
本研究は、2013年に端を発したウクライナ情勢の不安定化及び内戦に伴い、国内の農村地域、特にチェルノブイリ原発事故に伴う汚染が確認されている地域において住民の食生活がどのように変化したかを捉える初めての調査研究である。 内戦による食生活と健康への影響を早期に、かつ科学的に調査するため、対象となるウクライナ国ジトーミル州ナロージチ地区において、<1>経済状況、農畜産物・食事摂取状況 に関する実態調査、<2>ホールボディカウンターによる住民の内部被ばく量の実測、を並行して開始するとともに、データ収集が完了次第、<3>内戦開始前後での比較を速やかに行うことを目的とした。 平成28年度は、当初予定していた研究体制の構築と、ナロージチ地区の11家族34名を対象とした12ヶ月分のデータ収集を完了した。また、研究の背景となる内戦前後の経済状況や物価の指標についても、現地研究者との連携により政府機関の統計や文献の収集が進んでいる。 これまでの暫定的な分析の結果、対象者の摂取している食品には農作物の他に森林で採取した食品が多く、放射性セシウムが一定量含まれていることが確認できた。放射性セシウムの量には季節変動が見られ、現在も、原発事故による植物等への影響が続いており、それが一般家庭の食事にも含まれていることが示唆される。 内戦が激化し、2015年1月1日にチェルノブイリ被災者救援策が縮小されたが、救援策の中心を占めていた経済的支援がなくなったことにより住民生活にどのような影響が出ているかは報告されていない。 本研究はそうした実態の一端を初めて明らかにすることに寄与できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に実施予定としていた対象者の選定、ナロージチ地区中央病院への協力依頼及び研究体制の整備については完了した。調査参加可能な対象者は当初予定より少なくなったが、すでに月1回の食事調査及びホールボディーカウンタによる内部被ばく量の測定を開始し、12ヶ月分のデータ収集が終了。現地研究機関との連携によりデータ分析が順調に進んでおり、現在、調査結果の第一報をまとめている。今後、対象者を当初計画の規模に拡大して実施できるかどうか検討している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に協力の得られた対象者のうち、同意の得られた者について月1回の食事調査及びホールボディーカウンタによる内部被ばく量の測定を継続し、データの信頼性確認を行うとともに、対象者を当初の計画通りに拡大できるかどうか現地協力機関と検討を行っている。すでに得られたデータについては、平成29年度から30年度にかけて実施予定だった分析と結果評価を前倒しで行い、調査対象者、調査対象地域住民、現地研究機関へのフィードバックを速やかに行うことを目指す。
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