本研究は、2013年に端を発したウクライナ情勢の不安定化及び内戦に伴い、国内の農村地域、特にチェルノブイリ原発事故に伴う汚染が確認されている地域にお いて住民の食生活がどのように変化したかを捉える初めての調査研究である。 内戦による食生活と健康への影響を早期に、かつ科学的に調査するため、対象となるウクライナ国ジトーミル州ナロージチ地区において、<1>経済状況、農畜産物・食事摂取状況に関する実態調査、<2>ホールボディカウンターによる住民の内部被ばく量の実測、を並行して開始するとともに、<3>内戦開始前後での比較を速やかに行うことを目的とした。 平成28年度には、ナロージチ地区中央病院との研究体制の構築と、予定していた11家族34名を対象とした、食事調査およびホールボディカウンターによる測定のデータ収集を完了した。 平成29年度には、研究の背景となる内戦前後の経済状況や物価の指標の収集を行うとともに、データ分析を実施した。 内戦の激化に伴い、2015年1月1日にチェルノブイリ被災者救援策が縮小され、その中心を占めていた経済的支援がなくなっている。一方、収集された資料によると、武力衝突が続いた影響で、2014年から2015年にかけてはウクライナ国内の実質GDPの減少、消費者物価指数の上昇、食品消費量の減少などが見られた。平成30年度は、平成28年度に収集した食事調査およびホールボディカウンターによる測定データの分析を行い、内部被ばく量の変動等について確認を行った。
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