研究課題/領域番号 |
16K09144
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
金井 智恵子 和洋女子大学, 人文学部, 准教授 (00611089)
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研究分担者 |
太田 晴久 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 講師 (00439366)
加藤 進昌 昭和大学, その他部局等, 発達障害医療研究所 所長 (10106213)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 発達障害 / 視線計測 / 臨床研究 |
研究実績の概要 |
今年度は、引き続きASDの日本語能力との関連性について検討した。対象はASD患者14名および年齢・性別をマッチングした定型発達成人(TD)男性10名であり、視線計測を用いてASDの行動特性を明らかにした。これらと合わせ、質問紙調査を実施し、知能・性格特性の簡易評価を行った。方法はSamsonら(2010)のパラダイムに従い、一次の視点取得課題を行ってもらった。実験では、画面に表示されたアバターの目に見える赤丸の個数(Other Perspective条件)もしくは、被験者自身の目に見える赤丸の個数(Self-Perspective条件)をボタン押しで回答してもらうという課題を課し、その間の注視点をTobiiアイトラッカーで測定した。測定した注視点データを基に、3つのROIに対する平均注視時間を条件ごとに算出した。結果は、アバターの顔領域に対する注視時間に、群(ASD―TD)x実験条件(Self条件-Other条件)の交互作用がみられた(p <.05)。下位検定の結果、TD群における注視時間は、Other条件でSelf条件よりも有意に長かったが、ASD群では、実験条件の単純主効果は観られなかった。その他のROIに対する注視時間は、TD群のほうがASD群よりも有意に長かったものの、群と実験条件の交互作用は見出されなかった。考察では、ASDの視覚的視点取得能力に関する先行研究では、他者の目に“対象がどのように見えるか”と問う2次の視点取得課題では、TD群に比べ、ASDに成績低下がみられる一方、本研究で用いたような一次の視点取得課題の成績に群間差はみられないというのが通説だった(Pearson et al, 2013)。しかし、本研究の結果は、一次の視点取得課題においてもASDがTDとは異なるストラテジーを用いている可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験参加者の確保、視線計測の課題決定、診断・臨床評価のデータの収集は計画通りに実施されている。しかしTD群のサンプル数が少ないため、今年はTDを中心に実験を行う。リクルートや実験環境など実験の遂行上の問題はないと確信している。また幼児期ASDに関する研究は数例実験しているものの、数の確保が必要である。しかし2019年度は同志社大学(赤ちゃん研究)との共同研究が決まり、幼児期ASDの早期発見の研究が加速する見込みである。以上のような成果に基づき、来年度に向けて研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は以下の二点を中心に研究を進めていく。第一には成人TDの視線計測を実施する。現在視線計測の実験を実施している。今年度には実験を終了し、データをまとめて論文を投稿する予定である。第二には、乳幼児ASDに対しても実験を進めていく。最初はパイロット研究として、定型発達の子どもを対象に実験を行い、先行研究に基づく妥当な結果が得られれば、ASDの子どもを対象に生理学研究を用いた実験を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文化するためには、成人TDおよび幼児期のサンプル数を増やす必要があるためである。
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