研究課題/領域番号 |
16K09152
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
馬場 みちえ 福岡大学, 医学部, 准教授 (60320248)
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研究分担者 |
緒方 久美子 福岡大学, 医学部, 准教授 (00309981)
山本 八千代 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (10295149)
人見 裕江 山陽学園大学, 看護学部, 教授 (30259593)
大城 知子 福岡看護大学, 看護学部, 准教授 (50461538)
鮎川 春美 聖マリア学院大学, 看護学部, 講師 (60633005)
大倉 美鶴 日本赤十字北海道看護大学, 看護学部, 教授 (70364172)
坪井 義夫 福岡大学, 医学部, 教授 (90291822)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 認知症 / 家族支援 / プログラム / ガイドライン / ケアマネージャー |
研究実績の概要 |
2018年度は、実際に認知症初期の人の家族介護者が考えるニーズとそれを満たすことを目的に支援プログラム(介入)を2017年12月から5月まで1クール6回コースで介入した。内容は情報共有と相互交流の形式をとった。そのデータの解析を進めた。 介入は24名の家族介護者が参加し、平均年齢65.3歳、要介護度2以下が87.5%であった。家族介護者から出された毎回質問を整理した結果、ニーズとして大きく<認知症症状><介護サービス内容><受診方法>の3つがあげられ、相互交流のニーズとして<介護者自身の思いの共有>が挙げられた。さらに介入評価は、介入前後で本人の認知症症状DBD13が28.9±7.4から30.6±1.8(P<0.05)と進んでおり、周辺症状であるDASCは48.9±9.4から49.1±10.7変わらず、Zarit83.1±1.0から3.2±1.0と変化はなかった。また介護の対処方略尺度は、介入前で2.8±0.5点、介入後3.2±0.5点(P<0.001)、公的支援追求が介入前2.1±1.27点から介入後3.0±0.8点(P<0.05)と高くなっていた。 これらのことから、認知症の人の家族に対して、6か月介入した結果、6か月で認知症本人の症状は進むものの介入後家族が感じている介護負担(Zarit8)は増えなかった。このことは家族への支援に関して示唆を含むものと考えている。 今年度も実施予定であり、本研究3年間で得られたデータを詳細に分析し、家族介護者のニーズ、家族が求めている必要な情報についてさらに分析したいと考えている。そこから認知症の人の家族支援のあり方をガイドラインに反映し、誰でもが使える資料にしていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家族介護支援プログラム1クールめ(2017年)の介入実施と同時に非介入群を設定し、介入研究を実施した。介入群(24人)の介入前後での調査と非介入群の1か月目(40人)と6か月~8か月後に再調査(30人)した。現在そのデータがそろった段階である。介入群への介入をした結果、非介入群と比較して、どこに変化があり、介護者が支援してほしいニーズに即している情報を明らかにしたいと考えている。現在量的データとともに家族介護者からの言葉による質的データも集まってきている。そこから認知症の人の家族介護者支援のためのガイドラインをさらに洗練していきたい。 さらに行政や家族会からの要望があり、前回の介入研究に引き続き2クールめの家族支援プログラム介入を2018年12月~2019年4月まで実施し、15名が参加した。2017年の1クールめでは得られなかったニーズや言葉も得られた。認知症の人の症状や行動が違うため、より多くのデータから考察を重ねる必要があると考えている。 また、昨年ケアマネージャーに対して「認知症の人の家族介護者への支援」で研修を5回実施した。それによるとケアマネージャーは認知症の知識に関する講演会は多いが、順序だった整理された形での研修会ではないこと、また家族介護者の声や反応を知る機会も少ないということが明らかになった。今回の家族介護支援プログラムから得られた結果をケアマネージャーからの家族支援へのつなげたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
認知症の人の家族のための支援プログラムをこれまでに2クール介入し、非介入群を設定して、データはそろえた。現在その結果のデータクリーニングを進めており、今後解析し、情報発信していきたいと考えている。これらの解析をエビデンスとしながら、家族介護者の実際のニーズや支援方法をもとに検討していきたい。 現在認知症初期の人を介護する家族支援プログラムは、2017年、2018年と2クール終了した。行政と家族会、認知症疾患医療センターの協力と社会資源の1つとしてのニーズが高いため、2019年も1クール6回実施予定にしている。認知症の人の家族介護者の声やニーズをさらに集積したいと考えている。継続しながら定着していくことを目指している。認知症の人の家族への支援するためのガイドラインをもとに、支援プログラムの介入方法そのものも発信していき、広めたいと考えている。一方、支援者であるケアマネージャーに対しても、最も認知症の人と家族に対して支援内容の決定をしている。認知症への理解、本人および家族のニーズ、支援についてわかりやすい形で情報公開、発信していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年まで認知症の人の家族介護者を募集し、家族支援プログラムを実施することに力を置き、ガイドライン冊子等の印刷までできなかった。そのため、今年度得られたデータや情報を元にガイドライン冊子等を印刷したいと考えている。それを家族介護者およびケアマネージャーに配布し、研修を実施したいと考えている。 家族支援に関して先行研究が少なかったため、専門職に限らず誰でもが納得できる冊子となるよう、分担研究者とともに研究を進めていきたい。学会等でもディスカッションをしていきたい。そのための旅費等にも使用する計画である。
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