研究実績の概要 |
本研究は日本の刑事施設被収容者を対象とした結核・潜在性結核感染症(LTBI)スクリーニングの有用性を費用対効果の側面から検証することを目的とした。費用対効果分析を実施するにあたり、初年度~2年目にかけ、幾つかのパラメータに関する情報収集を目的として実施調査を行った。また3年目に刑事施設被収容者における結核感染のモデルを構築し、費用対効果分析を行った。 初年度~2年目:結核・LTBIスクリーニングの費用対効果に与える影響が大きいと思われ、尚且つ情報が不足しているパラメータとして1)刑事施設被収容者のLTBI有病率、2)刑事施設における結核患者の治療成績、3)刑事施設におけるLTBI患者の治療状況と治療の転帰、に関する実地調査を行った。1)入所時にLTBIスクリーニングを実施していた刑事施設より、健診結果を入手・分析した結果、刑事施設被収容者におけるLTBI有病率は0.2%と推定した。2)及び3)2015年1月1日~2016年12月31日に刑事施設より届出があった結核とLTBI患者に関し、該当保健所を対象としたアンケート調査と結核登録者情報システムのデータを組み合わせることで、最終的な治療成績を算出した。全体的な治療成功率は活動性結核患者72.4%、LTBI患者78.7%であった。 3年目:刑事施設被収容者10,000人を対象とし、毎年の胸部レントゲン撮影による健診(CXR)、入所時のIGRAによるスクリーニング(IGRA)、と何もなし、の費用対効果を比較した。分析の結果、健診なしだと発生する患者は314人で、発生予防できる患者数はCXRで1人、IGRAで228人であった。増分費用効果比はCXRで約500万円、IGRAで13万円とCXRを大きく下回った。CXRは拡張劣位として選択肢から除外される結果となった。
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