研究課題/領域番号 |
16K09157
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
東山 綾 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (20533003)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知機能 / 神経栄養因子 / 生活習慣 / 身体活動度 |
研究実績の概要 |
1.吹田研究で実施中の認知機能に関する研究:平成29年度は都市部住民コホート研究である吹田研究への協力者で80歳以上の男女、約150名に対し、MoCAを実施した。またMoCAで年齢相当の認知機能を維持しているとされた者に対し、詳細な多種類の神経心理検査を実施し、ここで米国での既存研究の基準に照らし合わせて認知機能に問題がないと判定された約60名に、頭部のPiB PET/CTとMRIを実施した。なおこれらの対象者は、過去10年間のいずれかのタイミングで血清を凍結保管しているため、これらの検体情報の整理と、平成29年度調査で採取した血清検体の凍結保管を実施した。また認知機能との関連を今後検討する可能がある、過去の心臓超音波検査結果を用いて、アメリカ心臓病学会疫学部門で、左房径と心房細動発症の関連を発表し討論を行った。心臓超音波検査は認知機能検査対象者でも過去に2回受けた者があると考えられ、過去の心機能と認知機能との関連も検討する準備を開始することができた。 2.神戸研究での認知機能に関する研究:神戸市の住民コホート研究である神戸研究でも、月1回のフォローアップ調査で75歳以上の者全員を対象に、MoCAを実施した。本住民コホート研究でも、過去6年間で詳細な身体活動度と血清検体を保管していると同時に、平成29年度も新たな血清検体を凍結保管している。 3.篠山研究:篠山市における特定健診受診者を対象にしたコホート研究において、同意を得た者から血清検体の凍結を今年度も実施した。40~64歳の受診者が主な対象であるが、今年度から65歳以上でも過去に篠山研究に協力した者に対しCAVIの測定を行うなど、動脈硬化に関するデータ収集も追跡として実施した。ここでも過去と今年度の血清検体の凍結が実施されており、平成30年度のBDNF測定に資する血液検体の収集が進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吹田、神戸、篠山における地域疫学研究において、着実に基本的な健診項目や生活習慣情報と、BDNFの測定が可能な血液検体が保管された。 また吹田研究では、80歳以上の対象者で認知機能検査結果を収集し、非常に高齢な研究対象設定であるにも関わらず地道に進行しており、次年度の12月までは70歳代後半にも対象者を増やして継続できる目途をたてることができた。さらに過去の心機能と認知機能の関連も、今後重要な研究トピックとなる可能性が出てきているが、29年度の吹田研究を対象に行った学会発表を機に、過去の心機能と現在の認知機能の関連を検討する基盤を築けたと考えている。具体的には、過去の吹田研究における心臓超音波の検査結果も、解析の対象とできる可能性が出てきたといえる。 神戸では、平成28年度の67人に続き、平成29年度は64人を対象にMoCAを実施し、基本的な健診項目と生活習慣情報の収集が継続されている。また篠山市では過去と現在の検体凍結作業が400~600人で継続中である。 以上より、概ね順調な経過である。
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今後の研究の推進方策 |
1.吹田研究:平成30年度12月までは、現在進行中の認知機能にかかわる詳細な研究を継続できる予定であり、現在よりもやや若い世代も含めて対象者を広げ、生活習慣や健診データの収集と血液検体の保管を継続する。また年度前半では、約150名のMoCA実施済みの者を対象にBDNFと、60名の画像検査も実施した者を対象にEPAやDHAなどの脂肪酸、イソフラボンを測定する計画である。生活習慣を反映するこれらの測定値とBDNFやMoCA結果の関連を検討する。また過去の心臓超音波検査の結果と、現在の認知機能の関連を検討するために、引き続き心臓超音波検査の結果整理とデータセット作成、基礎となる解析データの発表も実施する予定である。 2.神戸研究:引き続き新規で75歳以上に達する対象者にMoCAを継続的に実施する。また平成28年度からのMoCA実施者を対象に、過去とMoCA実施時の血液検体を使用してBDNFを測定する予定である。 3.篠山研究:より若い世代でのBDNFの分布を検討するために、過去や平成28年度以降の血清検体を用いてBDNFを測定して統計解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に、次年度も含む3年間に収集した血液検体を使用して、BDNFを測定するため。BDNFはまだ新しい検査項目であり、一般の測定会社では測定できず、専門の測定機関に測定を依頼する必要がある。可能な限り同一の試薬を使用して測定するほうが望ましいため、一括して測定するようにしておきたく、次年度使用額が高額となった。
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