1)地域疫学研究における血中神経栄養因子濃度の測定、およびその測定値と健診での必須測定項目や生活習慣との関連 ①吹田研究:75歳以上の吹田研究対象者約220名に、認知機能検査のスクリーニング検査(MoCA-J)を行い、神経栄養因子(BDNF)の測定を行った。また同対象者で、過去の凍結保管血清を使用して、同じ年度の検体を全例でそろえることは不可能だったが10年以内前のBDNFについても測定を実施した。本助成基金終了後の報告書に、BDNF測定値に関する結果を記載する。なお上記の対象者のうち、MoCA-Jが21点以上だった者にはより詳細な神経心理検査を実施し、さらにここで米国との共同研究が定める基準を満たし認知機能正常と判定された約110名には、MRI検査とPiB PET/CTを実施した。画像検査の結果は現在米国ピッツバーグ大学で解析を進めており、今後BDNFと画像検査の関連を検討できる可能性がある。 ②神戸研究:ベースライン調査後半にあたる2011年度の研究対象者である、神戸市一般住民約480名の凍結保管検体で、BDNFを測定した。吹田研究対象者で測定後、神戸研究で測定前に、測定試薬が試薬販売会社の都合により変更となったが、旧試薬と新試薬での相関は良好であることを確認した。なお本研究では吹田研究よりも平均年齢が若い段階でのBDNF測定を実施できており、吹田研究よりも詳細に生活習慣や状況を問診で聴取しているため、その特徴を踏まえて報告書に結果を記載する。 2)左心房拡大と心房細動発症リスクの関連(吹田研究):認知機能低下と関連が強い脳梗塞の強力な危険因子は心房細動である。心エコーで測定した左房径が拡大している場合には、吹田研究の心房細動発症リスクスコアで用いられる危険因子で調整しても、独立して心房細動発症の危険因子となることをアジアで初めて学術誌に論文発表した。
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