研究課題/領域番号 |
16K09160
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
井出 博生 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (80361484)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 受療率 / 在宅医療 / 訪問診療 / 訪問看護 / 地域差 / 時間距離 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では医療保険および介護保険のレセプトデータを活用し、在宅医療(訪問診療、訪問看護)の受療率(人口中の受療人数の割合)に関する分析を行った。A県において同意が得られた6市町を対象として、分析期間を平成25年9月~11月、平成26年9月~11月とし、訪問診療の分析を行うために医療保険レセプト、訪問看護の分析を行うために介護保険レセプトからデータを抽出した。なお平成26年4月には医療保険の診療報酬改定が実施されており、介護保険では行われていない。今回取得したデータからはこのような制度変更が受療状況に与えた影響を測ることができると考えられる。 取得したデータは訪問診療の場合でデータ件数13,256件、提供機関数386カ所、訪問看護の場合ではデータ件数8,079件、提供機関数95カ所であった。分析対象を65歳以上の高齢者に限り、非居住と考えられる利用者のデータを削除するなどの手続きを行い、自治体別、自治体内の地区別に件数、人口あたりの提供件数、供給者と需用者の間の時間距離等を計算した。 各市町における平成25年から平成26年にかけての訪問診療の増加率は116%~210%、訪問看護では101%~120%の間であった。市町毎に増加率は異なるが概ね訪問診療の方が大きく増加していた。人口1000人あたりの件数である受療率を比較すると、訪問診療では特に75歳以上の後期高齢者で概ね市部、女性の方が高く、平成26年度の方が高くなっていた。平成26年の訪問診療に要する時間距離の中央値は全体10.6分、自治体別には9.1分から14.2分、同様に訪問看護では全体11.0分、自治体別には7.7分から15.5分だった。ノンパラメトリック検定の結果、各自治体において平成26年の方が時間距離は延長した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定では、平成29年度に在宅医療に関する分析を行うことにしていたが、平成28年度中に在宅医療の分析に用いるレセプトデータの提供が受けられる目途が立ち、かつ平成28年度中に限った利用が許諾されたため、分析項目の順序を入れ替え、在宅医療に関する分析を実施した。本年度の研究は2カ年のデータによって実施したが、その間に診療報酬改定という制度変化があったので、受療率が変化する要因として仮説として掲げていた制度変化の影響を示すことができた。当初はサービスの供給側と需要側が同一自治体に存在すると考え、人口構造、提供側の組織の属性情報等と紐付けした分析を行うことを想定したが、各自治体でかなり広範囲にサービスの需給関係があることがわかり、このような分析は実施しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度においては自治体の研究協力が早く得られたため、平成29年度に実施予定であった分析を前倒しして実施した。平成29年度の研究では、平成28年度に実施する予定としていたがん、平成29年度後半に実施する予定であった全体に関する分析を実施する。これらの分析にあたっては統計情報の二次利用による個票データの処理が必要となるため、これらを効率的に取り扱うための環境整備(開発)が必要となる。平成28年度は前述のような事情があったために開発を実施しなかったので、平成29年度当初は以降の研究を実施するための開発を開始し、平成29年度の後半から分析作業に着手する。全体としては研究期間内の平成30年度末までには課題を終えられる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
自治体からのデータ取得の関係で研究の実施計画を変更し、平成28年度に実施予定であったプログラム開発が後年度に移行したために残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に当該の開発を行うので、計画全体は予定通り進行する。
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