本研究では、公的統計の個票データ等のマイクロデータと行政の集計情報等を用いた統合データベースを構築し、縦断的、横断的な分析を行い、受療率の変化の要因を加齢、制度による効果と地域 差に分解し、解明した。具体的には死亡小票、医療保険および介護保険のレセプトデータ、特定健診データを分析した。平成30年度以降は第一に医療保険者が保有する被保険者の特定健康診査の結果に関連するデータを取得し、被保険者が所属する集団の健康状態と個人の疾患(メタボリックシンドローム)の罹患の関連を検討した。その結果、メタボリックシンドロームの該当者割合が平均よりも高い医療保険者に加入する非メタボリックシンドローム該当者のメタボリックシンドローム罹患リスクが約1.1倍高いことが明らかになった。第二に100万人超の被保険者を持つ医療保険者において7年程度の属性情報、医療・介護レセプトデータ、特定健診等の結果に関するデータの提供を受け、地域性と生活習慣病のリスクファクターとの関連を調べた。詳細な検討の結果、個人の属性と生活習慣はエビデンスが示している効果と同じ方向の効果を示すが、概ね地域の効果の方が大きいことが明らかとなった。これらの結果から、サービス受給は医療・介護サービスの提供体制を含めた制度面での変化の影響を受けること、また生活習慣病に関連する検査値等に対しては、個人の属性や生活習慣との関連が示されつつも、概ね地域性の影響の方が大きいことが明らかとなった。個人に対する医療的な介入に加え、いわゆるポピュレーションアプローチとしての環境づくり、制度運営といった集団から社会までのマクロ的な対策の影響が大きいことから、政策の重要性が示唆された。
|