研究課題/領域番号 |
16K09164
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
長坂 憲治 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (70733608)
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研究分担者 |
有村 義宏 杏林大学, 医学部, 教授 (40222765)
堤野 みち 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (50277141)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 診療ガイドライン / モニタリング |
研究実績の概要 |
抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)は小血管の壊死性血管炎と高いANCA陽性率を共通の特徴とし多臓器病変を伴う全身性血管炎疾患群であり、難病法の指定難病となっている。AAVは全身性血管炎であり罹患臓器に応じた多くの診療科が診療に携わる。一方、各診療科の医師は所属学会も異なるため、AAVの診療は各学会が異なる治療方針を提唱しており、必ずしも標準化されたとは言い難かった。厚労省難治性血管炎調査研究班では、平成26年度よりAAVの診療ガイドライン(CPG)の全面改定作業をすすめ、平成29年2月にあらたなCPGが発刊された。CPGの発行はゴールではなく、スタートである。CPGの発行後にはモニタリングと結果の分析、これをもとにしたCPGの改訂が治療水準の向上には必須のプロセスであるが、本邦ではこの作業が一般化されているとは言い難く、このため長期的な視点に立った継続的な診療レベルの向上というCPGの本来の役割を果たせていなかった。一方、CPGのモニタリングも標準化されているとは言い難い。エビデンスに基づくガイドラインと日常診療の乖離はエビデンス・プラクティスギャップとして知られており、これを埋めるべくクオリティ・インディケーターが提唱されているが普及してはおらず、また個々の施設や医師での遵守率を測定できるにすぎない。このため、全国レベルでの把握は不可能である。本研究では、①指定難病の臨床個人調査票、②コホート研究のデータ、③各施設へのアンケート調査を用いて、CPG発刊前後の診療状況を多面的に解析し、CPGによる診療の変化と予後への影響を検証し次回改訂の資料作成と長期的観点における標準診療レベルの向上を目指すとともに、他のGLのローモデルとなることを目指すことを目的として開始された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
倫理審査委員会へ研究申請を行い、審査を経て研究を開始した。 ①臨床個人調査票を用いた解析について、電子媒体・データの利用を厚生労働省に申請予定であったが、本年度は研究状況が整わなかったため、申請を行うことができなかった。平成29年度第一四半期には状況が整うため、申請を行う予定である。データを入手したのちに、解析を開始する。 ②コホート研究を用いた解析では、厚労省研究班が2009年より新規AAVを対象に行ってきたRemIT-JAV研究のデータを提供いただいた。年齢、性別、罹患臓器合併症、ANCAのパターン、CRP値、治療内容について、情報を得た。これをもとに、(改訂CPG発効前のコホートではあるが)専門医集団における改訂CPG適合状況と、不適合例について、CPG適合に対する阻害因子について解析する。 ③各施設へのアンケート調査では、日本内科学会教育施設・教育施設ではあるが日本腎臓学会教育施設・日本リウマチ学会教育施設を検索した。このなかから、がんセンター、循環器病センターなどを除いた全国378施設に対して、初回のアンケートを行った。アンケート調査の内容は、当初の予定通り、AAVの診療で診療ガイドラインの認知、自施設でAAV寛解導入治療を行うかどうか、行う場合には、最近1年間で寛解導入治療を行った症例の状況(年齢、性別、AAVの罹患臓器、合併症、寛解導入治療内容)である。118施設より回答が得られた。現在、結果を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
①臨床個人調査票を用いた解析 昨年度は研究状況がそろわず申請できなかったが、状況が整ったのちに、臨床個人調査票の電子媒体・データの利用を厚生労働省に申請する。入力状況にもよるが、おおむね最近3年間のデータを解析する。発症時の年齢、性別、居住地、臓器別合併症、検査値、初回寛解導入時の治療内容を解析する。CPG発効前の集団ではあるが、改訂CPGの適合、不適合群に分け、改訂CPGの適合を阻害する候補因子を特定する。 ②コホート研究を用いた解析 RemIT-JAV研究のデータを引き続き解析する。改訂CPG発効前のコホートであるが、専門医集団における改訂CPG適合状況を解析する。また、厚労省研究班では、CPGのモニタリングと改訂を目的とした、あらたなコホート研究が開始される予定である。今年度内のデータ解析は不可能だが、次年度可能となるよう、必要な項目について、研究班と協力して検討する。 ③各施設へのアンケート調査を用いた解析 平成28年度末に得られたアンケート結果を引き続き解析する。①②と同様、改訂GL発行前の診療行動ではあるが、改訂GLの治療法との適合・不適合の割合と不適合の理由を分類する。また、平成29年度末に再度、③各施設へのアンケート調査を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、物品費、旅費を計上した。しかし、①倫理審査申請・承認の研究準備で時間を要し、実際の研究スタートまでに数カ月を要したこと、②本年度はデータの収集までであり、解析は次年度となったためこれに必要な費用を計上しなかったこと、から使用額が予定よりも少額となり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度のデータが収集され解析が開始されるため、物品費を中心に使用する予定である。
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