研究課題/領域番号 |
16K09164
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
長坂 憲治 東京医科歯科大学, 医学部, 非常勤講師 (70733608)
|
研究分担者 |
有村 義宏 杏林大学, 医学部, 名誉教授 (40222765)
堤野 みち 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (50277141)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 診療ガイドライン / モニタリング |
研究実績の概要 |
①厚労省指定難病のデータベース、②厚労省難治性血管炎調査研究班が行ったRemIT-JAV研究および現在計画段階の観察研究、③全国の病院で治療されたAAV患者の後ろ向きのデータを利用し、『ANCA関連血管炎の診療ガイドライン2017』の発行前後の診療状況を調査し、診療ガイドライン(CPG)の遵守状況、非遵守の場合、その阻害因子を検討する。 本年度は、発行前の状況を検討した。①について、解析可能であった新規発症例(2012年、2013年)は、MPA888例、GPA174例であった。MPAは平均年齢72.4歳、平均PSL使用量は38.5mg/day、CPGで推奨されるシクロホスファミド(CY)の併用は21.7%であった。一方、GPAは平均年齢61.8歳、平均PSL使用量は45.2mg/dayでCY併用は54%であった。MPA+GPAにおいて、CY使用有無に関連すると想定される因子について多変量解析を行うと、MPA、年齢上昇、喀血・血痰、急速進行性糸球体腎炎がCY併用なしと関連していた。次に、②に関して、RemIT-JAV研究データではMPA272例、GPA85例であった。MPAは平均年齢70.5歳、平均PSL使用量は40.3mg/day、CY併用は29.8%であった。一方、GPAは平均年齢65.6歳、平均PSL使用量は42.2mg/dayでCY併用は57.6%であった。MPA、GPAに加えEGPA、分類不能型を含むANCA関連血管炎477例において、①と同様に多変量解析を行うと、基礎疾患、血清Cr値、PSL投与量が抽出され、GPAがCY併用と最も関連していた。③について、膠原病および腎臓内科医のいない379施設にアンケートを送付し119施設より回答を得た。その結果、最近1年間に治療を行ったのは14施設(22例)であり、CY併用は36.3%であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①臨床個人調査票を用いた解析に関して、厚生労働省より電子媒体・データの利用許可を得ることができ、解析を開始した。新規登録例ではあるが新規治療開始ではない症例、厚労省の診断基準を満たさない症例が多数含まれていた。診断基準を満たすなど、今回の検討対象例の抽出に時間を要した。さらには、データ欠損、誤入力と思われる逸脱値が非常に多く含まれていた。データ量が多いこともあり、これらのクリーニングに相当の時間を要し、実際の検討を開始時期が遅れた。 ②コホート研究を用いた解析では、厚労省研究班が2009年より新規AAVを対象に行ってきたRemIT-JAV研究のデータを提供いただいた。改訂CPG発効前のコホートではあるが専門医集団における改訂CPG適合状況と、不適合例について、CPG適合に対する阻害因子について解析することができた。一方、CPG改訂後のコホート研究が開始されることが見込まれていたが、他のコホート研究を行っていたことから、新たなコホート研究の開始時期が遅れた。現在、研究プロトコールを検討している段階であり、平成30年度内には開始される予定である。 ③各施設へのアンケート調査では、日本腎臓学会教育施設・日本リウマチ学会教育施設以外の日本内科学会教育施設・教育施設のうち、がんセンター、循環器病センターなどを除いた全国378施設に対して、初回のアンケートを行い、得られた回答をもとに解析を行った。CPG改訂後の治療状況を調査するための第2回のアンケート調査を送付しており、本年度に結果を解析できる予定である。③については、概ね予定通りすすんでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
①臨床個人調査票を用いた解析:多変量解析を用いてガイドライン推奨の阻害因子を抽出することができたが、複数のモデルでの検討が未施行である。治療開始段階における患者背景阻害因子は多くの情報があるが、すべての情報について検討はできていない。検討できていない因子についても、CPG推奨治療の阻害因子となっていないか、検討を行う。さらに、欠損値のために利用できなかったケースも多数存在した。多重代入法を用いて欠損値を補完したデータセットを作成し、同様のCPG阻害因子が抽出されるか、あらたな阻害因子がみられるか、検討を行う。 ②コホート研究を用いた解析:RemIT-JAV研究のデータを用いて一定の結果を得ることができたが、①と同様、すべての背景因子を検討することはできなかったため、これらの因子を用いて引き続き解析する。さらに、寛解・生存に関するアウトカム情報を用いて、(CPG発行前のデータではあるが)CPG遵守・非遵守がアウトカムに与える影響について解析を行う。一方、あらたなコホート研究が開始される予定である。CPG改訂後の治療状況について、背景因子に関するCPG適合・不適合の解析は可能となる。研究期間内に登録される症例数が少ないことが予想されるが、CPG改訂後の専門医の治療状況が明らかとなる。 ③各施設へのアンケート調査を用いた解析:平成29年度末に送付したアンケート結果を解析する。少数の施設とはなるが、CPG改訂後に一般内科医の診療行動が変化したか、CPGで記載された治療法との適合・不適合の割合と不適合の理由を分類する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、物品費、旅費を計上した。しかし、アンケート調査施設が前回よりも少なかったこと、旅費は国内のみであったことから、使用額が予定よりも少額となり、次年度使用額が生じた。データ解析をすすめること、解析結果がではじめることから、解析ソフトを含めた物品費、旅費を中心に使用する予定である。
|