県行政主体でMLが設置されていたことから、複数の担当者にインタビューを行った。当時の対応の流れの確認を行い、現場と行政がいかに急性期に最初の接点を持つかが重要と思われた。また、ML開設については、主にDMAT(災害医療チーム)において使用していたMLの体制を流用したことが明らかとなり、他の都道府県でもほぼ同様の対応ができる体制があることが確認された。ML内における個人情報共有について、司法的観点から弁護士2名に見解を聞き、評価したところ、公共の利益になる点からまず問題はないと思われる点は一致したが、個人情報保護の除外項目における「公共の利益」に関する解釈については、評価が分かれた。可能な範囲で同意書や院内掲示をあらかじめ行っておくことが両者より推奨された。事後の病態解析における諸問題:事後の事例解析の体制については、地方衛生研究所担当者2名にインタビューを行った。当時は地方衛生研究所で「行政検査」として検体回収を行っていたことが明らかとなったが種々無理があった。検体を提供しない施設やその後の二次利用ができないなどである。現在は法改正が行われ、自治体の首長の指示により患者同意なく検体収集は可能となっている。検体の扱いについては保存、二次利用など取り決めがなく、今後はあらかじめ同意書内で目的外使用についても触れておくことも必要と思われた。最終年度で情報共有のあり方に関する問題、課題はほぼクリアされたが、今後のわが国においても国際連携を主軸に事態解析にも注力すべきであり、一括管理する国家機関の設定が必要であることを強く感じる。この点については、本研究では達成することはできず、引き続き関係各省にその必要性を訴え、学術的解析を明確に示していくことが本研究の使命と思われる。
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