本研究は、重症系集中治療室(ICU)におけるカテーテル関連血流感染(CRBSI)を減らすために、医療従事者への血流感染予防策の教育を行い、血流感染症率の低下に寄与する因子を検証することが目的である。本大学病院ICUでは国内のCRBSIサーベイランスに参加し、多職種でCRBSI予防策に取り組んできた。今回、5年間(2013年7月~2018年6月)に渡るCRBSIの推移と感染に関連する因子を分析した。感染率はJapanese Health-care Associated Infection Surveillanceへの登録データを記録した。血流感染に関係する可能性のある因子をカルテから抽出した。基本的なCRBSI予防策バンドルはチェックリストを使用し徹底した。介入策としては、予防策バンドルに加えてカテーテル挿入部位の皮膚のドレッシング材の工夫、三方活栓の使用時の消毒の徹底、感染防御専門看護師の定期監視などの対策を加えていった。 ICUにおいて1632例の中心静脈カテーテル挿入があり、当日に抜去した90例を除く1542例について解析した。CRBSIは63例であった。感染率の推移は3~6か月毎に、3.3、3.44、1.52、5.7、10.75、8.09、8.75、0、3.61、2.5、4、8.33、7.3、4.7、2.9、4.9であり、減少傾向にあるとは言えなかった。感染に関連する因子の検討では、段階的重回帰分析を行った結果、APACHEⅡScore、入院日数、ICU滞在日数、カテーテル挿入日数、複数カテーテル挿入、人工呼吸管理がCRBSIに関連していた。従来、大腿静脈穿刺がCRBSIに関与していると考えられたが、本研究では部位による感染率には差がなかった。大腿静脈の刺入部の清潔度を保持する対策が効果があったと考える。CRBSIはICU患者の重症度に強く影響を受けることが分かった。
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