①感染性胃腸炎疑いの小児患者における原因微生物をマルチプレックスPCR(以下Multiplex PCRと略)を用いて分析し、既存のイムノクロマト法(以下IC法と略)と細菌培養(以下培養と略)と比較した。〔結果〕2019年度冬季の感染性胃腸炎の入院患者数はゼロだった。埼玉県衛生研究所が発表する感染状況を比較しても、流行はあまり見られていない状況であった。2019年度の比較はできなかったが、2016年から通してみると、ノロウイルスにおいてはIC法とMultiplex PCRでは有意差をもってMultiplex PCRが有意であった(p<0.05)。ロタウイルスはIC法とMultiplex PCRとの結果が一致した。 〔考察〕IC法は簡便で安価であるが、流行株によっては感度がPCRの半分程度に下がり、精度に課題がある。臨床現場ではIC法が保険適応の検査であるが、その結果に従い隔離不要となると容易に院内感染が発症しうることが推測された。 ②二酸化塩素ガス発生装置を各病室に設置し、扉が開閉し空気が循環する空間内でどの程度二酸化塩素の濃度が保たれるかを検討し、その有効性と副作用を検討した。〔結果〕設置開始から5-6日目にガス濃度のピークがあり、その後緩やかに濃度が下がり、設置開始10-14日目に濃度が一定となった。無人の閉鎖空間におけるガス濃度に比べて全体的に5分の1の濃度だった。設置期間中、副作用は認めなかった。〔考察〕二酸化塩素濃度は放出、拡散、分解の3つの因子がある。病室は空気の循環があり、人口密度も高いため、おもに拡散と分解の要因が無人空間と比較すると強くなったと考える。前年度と比べて今年度は発生装置の交換頻度を上げたため、プラトーに至る日数は短縮された。
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