研究実績の概要 |
本研究はレセプトデータベースを用いることにより,新たな側面から現状のCOPD診療を評価し,ガイドラインで推奨される診療と実臨床の差異を検討しCOPDや慢性呼吸不全患者の診療について個別の詳細データからではなく,リアルワールドからのデータを把握することで,現状の診療の質評価を行うことが目的である.初年度はCOPD増悪入院時の治療内容の検討,これに続く呼吸リハビリテーションの実施状況,酸素・人工呼吸管理の実態を調べガイドラインの勧める治療との違い,呼吸管理における実態,これらに影響する患者背景因子を探ることから開始した.レセプトデータは(株)日本医療データセンター(JMDC)より入手.対象患者は慢性気管支炎,肺気腫,慢性閉塞性肺疾患のいずれかの病名がある患者と定義した(ICD-10コードのJ42,43,44に相当).さらに増悪は抗菌薬または全身ステロイド剤が使用された場合と仮定し,対象者を抽出した.病名だけで該当する患者が21514名,うち増悪条件に該当したのが11795名となった.この11795名には呼吸器以外の目的で該当薬が処方されているケースや,保険病名としてこれらが使用されている場合も含んでいる.そこで保険病名をできるだけ除外するため,さらに処方薬剤の内容から気管支拡張剤を処方されていないケースはCOPDの可能性が低いと判断し,再度対象者を絞り込む予定である.現時点では全体の増悪数についてはまだ確定できていないが処方条件だけで増悪に合致する1830名のサンプルで,定期的な気管支拡張剤の使用例は220名あり(全体の12%),全体では約1400例ほどの増悪と推定されるケースを抽出の見込みである.
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