研究実績の概要 |
COPD患者の多くは非専門医の下で治療されているが,その診療実態は不明である.特にCOPDの診断に重要なスパイロメトリーがプライマリケアであまり実施されていないことや,増悪に対する診療が適切に行われているかどうかなど実態は知られていない.他方,レセプトデータの解析は実際の医療内容が把握できるという利点があり,特に外来から入院までの診療内容が全て患者ごとに追跡できる点が特徴である.本研究はこのレセプトデータを基にCOPD診療の問題点を見つけることが目的である. 日本医療データセンターの管理するレセプトデータを利用し,COPD増悪時の診療実態を把握する検討により,21514人の病名該当者の中から,気管支拡張剤使用者,3か月以上の診療期間,薬剤使用条件などをもとに選別し,最終的に1018人を増悪患者として抽出した.COPD,慢性気管支炎,肺気腫のいずれかの病名コードが初回登録され,抗菌薬かつまたはステロイド投与を増悪と定義した.平均追跡期間35か月間で平均年齢53.9歳,女性が38.8%.使用薬剤,検査を検討したところ,増悪時に85.7%が抗菌薬を,35.4%がステロイド剤を投与されていた.ステロイドは診療所での投与が有意に少なかった.ステロイド投与期間は中央値で5日間と,従来のガイドライン推奨期間よりも短かった.初回増悪後6か月以内の再増悪は51.6%と多く,女性が有意に多かった.初回増悪前に診療が開始されている,あるいは増悪前に肺機能検査が実施されている場合に有意に再増悪頻度が少なかった.肺機能検査は増悪前17%,増悪後でも34.7%しか実施されず.診療所の実施率は25.3%に対し病院では51%と有意に実施率が高かった.結果には喘息が混在している可能性があったが,両者の鑑別は本研究では困難であった. これらの結果から,診療所における診療が不十分であることが示唆された.
|