研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)では併存疾患がQOLや予後に影響することが知られており,内外ガイドラインでは様々な疾患・病態に注意を呼びかけている.一方,現在の本邦におけるCOPDの臨床研究は,諸外国に比べると大半が75歳を越えた後期高齢者が対象となることが多く,壮中年期のCOPD患者の実態についてはあまり報告がない.そこで本研究では壮中年期の日本人COPD患者の併存症,生活状況について検討した. (株)JMDCが管理するレセプト及び健診データを使用し,2011年9月~2017年8月にCOPD,慢性気管支炎,肺気腫のいずれかの病名コードが登録され,気管支拡張薬を3か月以上使用した患者をCOPD群と定義.同時期にこれらの病名がない対象から年齢,性別をマッチングして対照群とした. COPDは1505人(平均55歳),対照4515人.60歳未満のCOPDは全体の75%を占めた.男女別,年齢別に併存症の頻度を見たところ,①全体に性別・年齢を問わず糖尿病,消化性潰瘍,悪性腫瘍の頻度が高い傾向あるが,②男性COPDでは高齢ほど虚血性心疾患が多くなるが,女性にはこの傾向は認めず,③一方で女性COPDは60歳未満でいずれの併存症も頻度が高いが,60歳以後は消化性潰瘍以外に差がなく,④問診で男性COPDは身体活動に関する項目において有意に対照群より不良であったが,女性COPDでは男性ほどの差は認めず.⑤女性は「20歳以後の10kg以上の体重増加」が全年代に共通した特徴であった.本研究におけるCOPD・喘息の解釈には注意が必要だが性差よる生活習慣の違いは考慮する必要がある.男女とも最も多い併存症は喘息であったが,保険病名の混在が疑われるため解釈は困難であった. 今後さらに日本人の前向きデータ集積が必要であり,併存症からCOPDを想定しスクリーニングする戦略は欧米と異なる可能性がある.
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