本研究の目的は、これまで、転倒危険度評価であまり重要視されてこなかった、バランス保持能力評価 (Standing Test for Imbalance and Disequilibrium)と新たに開発したバランス保持能力のメタ認知、衝動性、記憶といったadherence (規則遵守) 評価を組み合わせて、入院初日にベッドサイドで実施可能な簡便な転倒危険度評価法を開発し、回復期リハビリテーション病棟で多く発生する入棟から14 日以内の転倒を予測し転倒を減らすことである。 研究3年目で最終年度である本年度は、データ数を増すとともに、adherence (規則遵守) 評価の組み合わせ等による予測精度についての解析を進めた。加えて、転倒の質的な分析も進めた。 Adherence評価(性格、記憶と指示遵守、衝動性)3項目の陽性の数、すなわち0から3点の間で、全ての組み合わせで2群に分けて転倒発生割合に差があるかFisher's exact testで検討したが、意味のある差は認められなかった。さらに、SIDE levelからメタSIDE levelを減じた値0以上群とマイナス群、プラスと0以下群の2群に分けて転倒に差があるかをFisher's exact testで検討したが差は認められなかった。 転倒の内容についてその質で ①抑制/センサーあり、②抑制/センサーなし、③見守り/介助下、④ 見守り/介助でその場を離れて、⑤見守り/介助不要、の5分類を行い検討した。全体では、開始1から2年目に発生した年間転倒数に比べ最終年度では転倒数は減少した。転倒分類の質では、⑤に分類された見守り/介助不要と判断した患者の転倒が特に減少していた。
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