昨年度までの一連の調査から、我々は、国内の鍼灸関連団体が安全性情報を共有するための枠組みが必要であると考えた。本件について、長年、地方の鍼灸師会に所属し、現在、要職についている3名に意見を求めたところ、1)鍼灸の医療事故調査は今後さらに重要となる、2)定期的な事故を含めた安全性情報の提供を希望する、3)師会や学会および学校関係のみならず鍼灸接骨院グループなどの企業にも調査を依頼すべきである。 以上のヒアリング調査を踏まえ、我々は「鍼灸医療事故報告サイト(仮称)」を立ち上げた。本サイトは、我々が所属する(公社)全日本鍼灸学会学術研究部安全性委員会が主体となって、鍼灸臨床における医療事故情報を収集するというものである。 具体的には、1)安全性委員会から、全国の鍼灸師会、鍼灸関連学会、鍼灸関連企業等を介して各団体の会員に調査依頼を行う。2)会員は本サイトにアクセスし回答を行う。3)安全性委員会は調査結果を各団体を介して会員に報告を行う。その際、安全性委員会が別途行っている文献調査のレビューや安全対策に関する情報を提供する。 本サイトについて、国内の鍼灸業界団体である(公社)日本鍼灸師会、(公社)全日本鍼灸マッサージ師会、(公社)全日本鍼灸学会、(公社)東洋療法学校協会、理療科教員連盟からなる鍼灸医療安全性連絡協議会(旧 鍼灸安全性委員会)にて説明を行い、各団体の会長(一部、副会長)の賛同と協力の了承を得た。 また、第68回(公社)全日本鍼灸学会学術大会にて発表を行ったところ「提供される情報の信憑性をどう担保するか」について質問があった。本サイトの正式な運用までには、複数回のプレ調査を行い、情報の信憑性を含めた所々の問題点を洗い出す必要がある。これらの問題を解決し、その後は継続した調査と安全性情報の提供に努め、国内鍼灸の安全性向上に寄与したいと考えている。
|