研究課題/領域番号 |
16K09198
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
臼井 章仁 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90588394)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 法医学 / 死後CT / 薬物中毒 |
研究実績の概要 |
死後CTによる薬物中毒死に関する研究結果について、主に自殺を企図した経口的な薬物摂取の症例に関してだが、薬物摂取を示すCT画像所見(胃・十二指腸内のX線高吸収物)が出現する頻度、摂取した薬物の種類と血中濃度、そして遺体発見現場における捜査情報との関連など、英語論文誌に掲載(Tohoku J Exp Med. 2017 Jul;242(3):183-192.)した。対象が身元不明であることも少なくない法医解剖症例について、死者の医学情報は、質・量ともに事前に得られることが限られていることが多い。死後CTにより、解剖前に薬物摂取の可能性が示唆できることは、解剖者・司法関係者にとって有用な情報である。 この他に、死体現象である胃融解、すなわち、死後に現れる胃壁の菲薄化・穿孔に関して、今回の研究対象である薬物を過剰摂取した症例に多くみられることも経験した。このことについては、生前の上部消化管穿孔による汎発性腹膜炎による死亡例との鑑別が重要であり、胃融解との死後CT画像所見の差異に関して、法医学会研究会にて発表を行なった。 頚椎損傷に関しては、致死的損傷である頸髄損傷を直接検出することは困難である。そこで、直接的なCT画像所見ではなく、頚椎・頸髄損傷を示し得る間接的な所見、例えば頚椎周囲の軟部組織の腫脹、頚椎配列の乱れ、椎体間の離開損傷を示す椎間板内ガスの存在などによる多断面再構成画像を使用した診断率について、欧州放射線学会(European Congress of Radiology, 2018)にて発表を行なった。 風呂溺については、解析できる症例を蓄積中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薬物中毒、頚椎損傷に関する研究成果について、国内のみならず、英論文誌、国際学会等において、発表することができた。 また、初年度は断念した3Dプリンタの購入が、価格の低下したことにより可能であった。これにより、椎体損傷といった骨折や、体内異物などの所見を、二次元の画像だけではなく、三次元のモデルを作成可能になった。これは司法関係者に概ね好評のようである。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、他大学による法医解剖が開始されたこともあり、今後、症例を網羅的に多数蓄積することはやや困難である可能性がある。 そこで、最後の課題である風呂溺について、これまでのデータを基に解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた3Dプリンタであるが、初年度は高額のため断念したものの、今年度は安価な製品の発売により、購入予定金額よりも安価であったこと、また、3次元モデル作成のための材料もまた、安価でありコストを削減できたことによる。 次年度については、蓄積しているデータ保存用ストレージの拡張、また、3Dプリンタにより作成したモデルの保管場所の確保に使用する計画である。
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