臨床医学、基礎医学の発展にもかかわらず、敗血症性多臓器不全による死亡率はいまだに高い水準にあり、早期診断や効果的な治療方法の確立が求められている。敗血症は感染した病原菌などが血流にはいりサイトカインが高産生され、免疫細胞が異常に活性化された病態である。ただし、この炎症性サイトカインの血中濃度は、敗血症早期に収束することが知られている。したがって、敗血症で遷延する臓器障害の原因としては、持続するミトコンドリアの機能低下などがその本態として想定されいている。我々はこれまでに心臓、肺、水晶体などをはじめ多臓器において、敗血症病態における活性酸素種の集積やミトコンドリア障害を確認し、活性酸素種の集積を抑制することで、臓器障害や機能障害が軽減することを見出し、英文雑誌に報告してきた。これまで、今大腸菌などのグラム陰性菌の細胞壁成分であるリポポリサッカリドを処理したラットの肝臓において、血管内や血管近傍に変性して電子密度の高いミトコンドリアの集簇を確認し、障害ミトコンドリアが細胞外に分泌されていることはわかっていたが、その意義は不明であった。本研究では、これがオートファジーノックアウト細胞でキャンセルされること、また単離白血球に精製ミトコンドリアを曝露したところ炎症性サイトカインが産生されたことから、ミトコンドリアの原核生物様性質によっって、免疫活性化がおこっているのではないかということが推定された。
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