研究実績の概要 |
尿は非侵襲性であるため、血液や組織よりも入手しやすい検体であるが、危険ドラッグである合成カンナビノイド類の分子イオンの尿中濃度は血液や組織よりも極めて低く、中毒により死亡していても検出できないことが使用初期の頃より報告されている。そのためそれらの代謝物の検出によって摂取の指標とする提案もなされてきた。しかし合成カンナビノイド類の構造は類似しているため、主代謝物の構造が同じで中毒物の特定が困難であることが多いので、やはり元の分子イオンを検出することが望ましい。我々は尿中の合成カンナビノイドの分子イオンを超高感度に定量する方法の考案を試みた。 【方法】尿400 μlに内部標準を4 μl、buffer80 μl、1-chlorobutane (CB) を800 μl添加し混合後、10,000 Gで2分間遠心し、上層を別容器に採取した。再度、CBで抽出し採取した。CBを蒸発させ残渣を100 μlのメタノール溶液とした。その5 μlをAcquityのLCに注入し、 4000 QTRAP MS/MS (AB SCIEX)で測定した。【結果及び考察】検出限界は 3 - 8 pg/ml, 定量域は10 - 1000 pg/ml であった。第1の剖検尿ではAB-PINACA, AB-FUBINACAが夫々23, 10 pg/ml, 第2の剖検尿ではAB-CHMINACA, 5F-AMBが夫々239, 19 pg/ml, 第3の剖検尿ではMAB-CHMINACA, 5F-ADBが夫々229, 19 pg/mlであった。これらの血液や組織中濃度については報告されている症例もあるが、尿中濃度の報告は未だなされていなかった。 以上の結果をForensic Toxicology (2017) 35:275-283で報告した。
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