昨年度までにビリンプロモーター転写開始点より上流100bp以内に位置するTATA Box様配列の存在を確認し、ルシフェラーゼレポーターアッセイを中心にリトコール酸に対する転写応答について検討したところ、リトコール酸刺激下においてTBPの転写活性が低下することが示唆された。そこで、同配列について詳細に検討すると、同部位がTATA Box様配列であるのと同時に、転写因子SRFが結合するCArG Box配列となっていることがわかった。プロモーターの配列解析からビリンプロモーターにCArG Box配列が存在することを報告した文献は存在するものの、その詳細な転写機構を調べた報告はなかった。そこで本年はCArG Box配列に結合する転写因子SRFとリトコール酸との関連を中心に検討した。CArG Boxをプロモーターに持つPromega社 pGL4.34ルシフェラーゼレポーターベクターを用いてリトコール酸刺激に対する転写活性を測定したところ、リトコール酸に応答し転写活性の低下が観察された。前年度までの結果と合わせて、ビリンはプロモータ上の同じ位置に存在するTATA Box/CArG Box配列により、TBPおよびSRFを介して転写調節を受けており、両転写因子共にリトコール酸により負の制御を受けることが示唆された。この時、SRF、TBP共に発現量の変化は認められなかったことから、少なくともリトコール酸によるこれら転写因子の負の制御の機構は転写因子の発現量に依存したものではなかった。
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