OPG-RANKL軸が心臓性急死にどのように関与しているかという観点から、法医解剖例心筋におけるOPG及びその受容体のRANKの発現を免疫組織化学にて評価し、平成28年度に日本法医学会学術全国集会にて発表した。特定の死因との関係は見いだせなかったが、心筋においてOPG-RANKL軸が何らかの恒常的なオートクライン的調節機構を担っている可能性が示唆された。 OPG-RANKL軸のシグナル下流分子であるTRAF6発現を免疫組織化学にて検討したが、全症例においてびまん性に発現を認め、シグナル系における死因別の差異は示されなかった。OPGの発現調節にはc-junが重要な役割を果たしていることを既に明らかにしているが、心筋細胞でc-junの免疫染色を行ったところ、陽性コントロールでは陽性を示したが、剖検検体心筋では有意な陽性像を認めなかった。骨代謝関連分子として、TGF betaの免疫染色を施行したが、瀰漫性に陽性であった。 蛋白レベルではなく、mRNAレベルでの検討を行うため、OPG特異的プローブを6個設計し、大腸癌組織でプローブの有効性を確認した後に、剖検心筋組織で OPGのin situ hybridizationを施行したが、心筋組織において有意な発現は確認できなかった。 法医解剖症例において血清中のOPG蛋白を、死因に応じてELISA法で解析したが、特定の死因との関連性は認めなかった。 OPGの免疫染色を新規抗体2種で追加検討したが、いずれも有意な結果は得られなかった。心筋細胞に見られるいわゆる消耗色素、リポフスチンが染色結果の解釈に影響を与える可能性がある。OPGは分泌蛋白のため、免疫染色による検討に限界がある可能性が示唆された。 培養心筋細胞においてOPGのmRNA発現を確認した。剖検検体を用いたRNA発現解析では、心臓死症例と非心臓死症例で発現に差を認めた。
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