研究課題/領域番号 |
16K09213
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
青木 康博 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90202481)
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研究分担者 |
琵琶坂 仁 岩手医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90405837)
臼井 章仁 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90588394)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 寛骨 / 相同モデル / 年齢推定 / 性別判定 / 主成分分析 / 画像解析 / CT画像 / 法医人類学 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き寛骨CTデータから左右寛骨の3次元像を描出し,相同モデルを作成した。サンプル総数は,分析用(Group A)が902例(男性514例,女性388例,年齢16~100歳),検証用(Group B)が215例(男性118例,女性97例,年齢15~91歳)となった。一方で,相同モデルの作成法について再検討し,ポリゴンの設定(頂点分布)を修正することにより,解析により適したモデルの構築が可能となった。 Group Aサンプルにつき主成分分析(PCA)を再施行したところ,前年度と同様年齢依存性主成分(PC)が検出され,また年代ごとの平均像のPCAでも年齢との強い相関(|R|=0.94~0.98)を示すPCが検出されたが,当該PC値をもとに作成した平均像を利用した,面間(形状点間)距離による年齢推定法では,Group Bサンプルが10歳幅の実年代域に入った割合は17.6~29.7%に留まった。 全例のPCAの結果を用い,赤池評価基準にしたがって変数を選択した重回帰分析では,補正決定係数は男性では左側0.463,右側0.484(切片52.8),女性ではそれぞれ0.551,0.588(切片56.4)となり,一定の傾向は認められるが,実務上有用な識別力は得られないものと考えられた。 一方,男女両性の年代別平均像を用いたPCAでは左右とも第1PCの平均値に顕著な差(左±105.0,右±98.5)が見られ,それぞれの値を採用して作成した男女各々の平均像を利用した平均面間距離比較によるGroupBサンプルの性別判定では,93%以上の正答率が得られ,定量的性別判定法としての有用性が示された。なお,誤判定は男性若年者,女性高齢者に目立ち,これは大坐骨切痕の形状変化などが影響しているものと考えられた。 さらに右寛骨サンプルの相同モデルの鏡像を作成し,左寛骨との平均面間距離を測定したところ,男性では2.80mm,女性では3.17mm と女性の方が有意に大きい値を得た。PCAの結果からこの左右差は両性とも主として腸骨窩の曲率に由来することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンプルの収集は順調であり当初の目標数に達し,さらなる取得も期待できる。年齢依存性変化を検出することと併行して,性差,左右差を解析し,データを得たことにより,形態学的変化に関し,より詳細な検討が行えた。また,相同モデル作成法の再検討により,より再現性の高いポリゴン像の構築が可能になったが,このことなどにより寛骨(coxal bone)のみならず骨盤骨(pelvis)全体を対象とした解析を行う見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに行われた研究結果について,現在論文執筆中であり,次年度早期に投稿する予定である。形態学的特徴による年齢推定の実務的への応用については,方法,特徴部位の選定等,さらに検討を行う。また骨盤骨(pelvis)の相同モデルを作成し,これまでと同様,および新たな解析法を用いて定量的解析を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 相同モデル作成および主成分分析に用いる市販ソフトウエアが改良されるとの見通しがあり,購入を予定していたが,年度内に開発されなかった。 (使用計画) 当該ソフトウエアは次年度早期に開発される予定であるので,その購入費用にあてる。
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