研究課題
骨盤骨はヒトにおいて性的二型のもっとも顕著な骨であり,年齢推定にも有用であることなどから,法医人類学的に重視されてきた。本研究では,法医剖検例などのCT画像から再構成した寛骨三次元像から相同モデルを作成することにより,寛骨形状データを定量化し,寛骨の加齢に伴う形状変化や年齢推定・性別判定の可能性について検討した。今年度は,検証用の男女CT画像計224例(男性117例,女性97例,15~91歳)につき,左右寛骨の3次元像を描出し,それぞれについて相同モデルを作成し,前年度までの分析結果に基づく判定法の精度を検討した。男女の左右寛骨像の第1主成分の平均値をもとに作成した対照相同モデルとの面間(形状点間)距離の比較による性別判定では,検証用モデルの94%が正しく判定された。なお,若年男性および高齢女性における誤判定がやや多い結果となった。一方,年代別平均像との面間距離による年齢推定法では,各寛骨相同モデルが当該の10歳幅の年代域に入った割合の平均は男性では29%,女性では23%にとどまった。さらに寛骨形状の左右差につき,右寛骨相同モデルの鏡像を作成(男性508例,女性383例)を作成し,主成分分析を行い左右差を示す成分を検索するとともに,頂点間距離を計測し,その男女間における差異について検討した。前者においては男女とも第2主成分値がすべての年代において左右差を示し,腸骨窩の形状(曲率)が影響していると考えられた。なお,この差は女性の方が大きい傾向を示しており,この点は先行研究とはやや異なる結果となった。本研究を通じ,適切な相同モデル作成法について詳細に検討したことにより,複雑な形状を有する物体についても相同モデルを用いた分析が可能であることが示唆された。年齢推定においては高い精度を得られなかったので,この点を中心に,対象を骨盤全体に拡張し,今後さらに検討を進めることとする。
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Legal Medicine
巻: 36 ページ: 1-8
https://doi.org/10.1016/j.legalmed.2018.09.017