研究課題/領域番号 |
16K09214
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
東條 美紗 京都府立医科大学, 医学部, 研究員 (10761166)
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研究分担者 |
新谷 香 (石田香) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345047)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PTX3 / 急性冠症候群 / 突然死 |
研究実績の概要 |
PTX3は心血管系疾患の迅速診断マーカーとして臨床で注目されているが、法医実務利用のための検証はない。心臓突然死した法医解剖症例に対して有用なバイオマーカーとなりうるか検証した。 鑑定が終わった症例において、急性冠症候群(ACS)による突然死と診断された症例を超急性期死亡ACS群と急性期死亡ACS群に分け、陽性対象群として感染症症例、陰性対象群として窒息死症例と外傷による即死症例を抽出した。解剖時採取した心臓血は清分離し冷凍保存しているため、これを用いELISA法にて血中PTX3濃度を測定、各群の比較を行った。超急性期死亡ACS群で陰性対象群より高値を示した。急性期死亡ACS群でCRPは高値であったがPTX3の上昇は見られなかった。よってACS、特に超急性期に死亡したACSの死因診断に対し有用であると思われた。陰性対照群のPTX3濃度は生体血の基準値よりも高値であったが、これは好中球内に限局するPTX3が漏出しているためであることが明らかになった。これらの結果は、学術専門誌に投稿中である。 予備実験の過程で、PTX3による免疫組織化学染色において、ACSの原因である冠状動脈プラーク部だけでなく、病変近くの血管周囲、また外傷による皮膚損傷部においてもPTX3のが発現することを見出した。PTX3は創傷治癒や血管内皮障害後の血管リモデリングに関与していると考えられている。皮膚創傷治癒モデルマウスを作製し免疫組織化学染色で検討すると、創傷後1時間と早い時間からPTX3の発現が認められた。FGF2は血管新生増殖因子で、炎症により発現する。PTX3はFGF2と高親和性で、FGF2のFGF受容体への結合を阻害し、血管新生作用を抑制すると考えらている。FGF2を免疫組織化学染色してみたところ、PTX3と同様に早い時間から発現が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血中PTX3濃度と急性冠症候群の関係について新たな知見が得られ、論文投稿中であることや、皮膚創傷治癒モデルマウスの実験条件が確立し、当初の実験計画通りに進んでいることから、(2)と評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
血中PTX3濃度について、死後変化、特に粥状硬化巣からのPTX3の死後拡散の影響を検討するため、心内血と末梢血など、採取部位による濃度の差異について実験する。 皮膚創傷治癒モデルマウスでは、治癒早期段階におけるPTX3関与のメカニズムを明らかにするため、FGF2との関係などを、RT-PCRやウェスタンブロッティング法等を用いて検討する。 ラット心筋虚血再灌流モデルでは、血管周囲の線維化を伴うリモデリングにおけるPTX3の役割を、Calpainとの関係性等からアプローチし、解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫組織化学染色に凍結切片が必要であるため、クリオスタットの購入費を計上していたが、本学共通機器として最新型機が導入され、使用可能なことから購入しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
RT-PCRやウェスタンブロッティングに使用する試薬、免疫組織化学染色に使用する抗体、染色後の画像解析ソフトの購入等に充てる予定である。
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