研究実績の概要 |
セロトニン受容体のうち5-HT2A受容体に特異的に作用する25B-NBOMeを用い、23℃または29℃環境下でラットの体温変化の測定を行うことで、環境温度と高体温発現の関係について調べる実験を行った。 平成29年度までの実験により、25B-NBOMeは29℃環境下でのみ高体温を引き起こし、その際には早期相(投与後~30分後)には末梢血管収縮が、後期相(60~120分後)には褐色脂肪組織(BAT)での熱産生と末梢中セロトニン濃度低下が起こっていることが示された。血液脳関門を通過しないセロトニンを末梢投与したところ、29℃環境下での後期相の高体温が抑制されるが、BATの熱産生抑制効果は限定的であることを示した。一方、同様に29℃環境下で、血液脳関門を通過しない5-HT2A受容体阻害薬のサルポグレラートを末梢投与すると、25B-NBOM投与後早期の体温上昇を抑制し、末梢血管収縮も抑制されていたことが確認された。これらのことから、高温環境下で25B-NBOMeにより誘発される高体温には、①早期:末梢5-HT2A受容体刺激による末梢血管収縮により蓄熱する ②後期:BATでの熱産生が起こり、それには末梢セロトニン濃度低下が関与 という2つの体温調整機構が働くことが推定された。 平成30年度の実験では、両側側脳室に6-OHDAを投与し、ノルアドレナリン神経を選択的に破壊したラットに29度環境下で25B-NBOMeを投与したところ、神経破壊を行わないコントロール群と同様に高体温を引き起こすことを確認した。同様に、5,7-DHTで中枢のセロトニン神経を選択的に破壊したラットも、29度環境下で25B-NBOMeによる高体温を起こすことを確認した。 これらの結果から、薬剤性高体温には中枢神経支配から独立した機構が存在し、それには末梢セロトニンが関わっていることが示され、論文に纏め発表した。
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