研究課題/領域番号 |
16K09217
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
藤田 友嗣 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50721974)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中毒 / 法中毒 / 薬毒物分析 / リチウム |
研究実績の概要 |
双極性障害の治療で用いられるリチウム(Li)は、自殺目的で大量摂取する事例に加え、有効域と中毒域が近接しているため慢性中毒の頻度が比較的高い薬物である。Liの分析は元素分析装置を所有する機関が限られており広く行われていない。法医剖検例では、患者情報を入手できないことがあり、Liが死因に影響を及ぼしていてもLi中毒を見過している可能性がある。本研究では、高度・高額な機器がなくても全血中のLiを簡便かつ迅速に検出する方法を確立して法医剖検事例に応用し、Li中毒の影響ならびにその実態を明らかにすることである。本年度は、F28ポルフィリンキレート化合物(F28TPP)をLiの特異的発色剤とした「色相変化」による検出法の全血サンプルへの適応を検討した。リチウムを添加した全血試料 (0、0.5、1.0、1.9、3.0 mEq/L) 150 μLに等量の10% スルホサリチル酸水溶液を加えて除タンパクを行った。遠心分離した上清8 μLにF28TPP試薬240 μLを添加してLED光を約1 分照射後、蛍光灯下で5、10、20、30、60、120、180、240分の色相を確認した。全血にF28TPP試薬を直接添加する方法では、ヘモグロビンの影響を受けるため、色相による確認は困難であった。そこで、全血試料をスルホサリチル酸溶液で除タンパクした上清を用いたところ、0 mEq/Lは緑色、0.5と1.0 mEq/Lは橙色、1.9と3.0 mEq/Lは赤色を呈し、その色相は60分まで安定していた。本結果は本法が全血中Liを色相変化により半定量的に検出できることを示しており、分析条件に関しては、ほぼ確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Li服用歴がある法医剖検事例に関して、F28TPPを用いた色相変化による検出法を導入する予定であったが、2016年度の剖検例においてLi服用歴がある事例は存在せず、これらの検討が行えなかった為、研究に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
F28TPPを用いた色相変化による全血中のLi検出法を法医剖検事例へ導入する。しかし、2016年度の剖検事例ではLi服用歴があった事例は存在せず、2017年度に関しても同様の事態になる可能性がある。そこで、これまでの計画では分析対象をLi服用歴のある事例としていたが、今後はスクリーニング検査の項目の一つとして本法によるLiの検査を剖検事例に対し実施するよう計画を変更する。これにより、見過しているLi中毒事例を抽出することができ、Li中毒の影響ならびにその実態を明らかにすることが可能になると思われる。また、F28TPPを用いた吸光度法による定量法についての検討も実施する予定である。これらの成果を発表するべく、今年度はドイツで開催される国際法医学シンポジウムに参加する予定である。
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